2010 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子導入による新規肺胞上皮細胞モデルの作出と薬物の肺移行・肺毒性研究への応用
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22390031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高野 幹久 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20211336)
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Keywords | 肺胞上皮細胞 / モデル細胞作出 / Abca3 / dipalmitoylphosphatidylcholine / lamellar body / 肺サーファクタント |
Research Abstract |
本研究は、肺胞上皮由来の株化培養細胞を用い、特定遺伝子の導入や分化制御因子の併用によって、新たな肺胞上皮II型・I型細胞モデルを作出することを第一の目的とする。次に作出したモデル細胞系を用いて、薬物の肺移行および肺障害発現の分子機構を解明することを第二の目的とする。本年度(初年度)は、第一の点について検討を開始した。 肺胞上皮II型細胞内には、lamellar bodyと呼ばれる特徴的な構造がある。lamellar bodyは肺サーファクタントの生成・分泌を担っており、その膜には脂質トランスポーターAbca3が存在する。そこでまず、ラットAbca3遺伝子の単離と、ラット由来株化肺胞上皮細胞RLE-6TNへの導入を試みた。PCRにより全長遺伝子を単離し細胞へ導入したところ、少なくともtransientにはAbca3タンパク質の発現とlamellar body膜上への局在が観察された。また、Abca3遺伝子導入に伴って他のII型関連遺伝子の発現も上昇するとの予備的知見を得たが、現在さらに発現効率の高い安定発現系を構築しているところである。またAbca3-GFP融合タンパクを発現するベクターを構築し、細胞内局在についてさらに解析を進める準備をしている。一方、肺サーファクタントの主要構成脂質であるdipalmitoylphosphatidylcholine(DPPC)で細胞を処理したところ、細胞内のlamellar body様構造が増加し、またSP-BやPepT2などII型関連遣伝子の発現も上昇した。以上から、特定遺伝子の導入や形態・形質制御因子の併用によって、よりin vivoに近いII型培養細胞が作出できる可能性が示唆された。
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