2012 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子導入による新規肺胞上皮細胞モデルの作出と薬物の肺移行・肺毒性研究への応用
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22390031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高野 幹久 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 教授 (20211336)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肺胞上皮細胞 / II型細胞 / ABCA3遺伝子 / 形質制御 / lamellar body / 上皮間葉転換 / TGF-β1 / ブレオマイシン |
Research Abstract |
本研究では、肺胞上皮細胞について、1)初代培養細胞や株化細胞の欠点を克服すべく、肺胞上皮由来の株化培養細胞を出発材料とし、特定遺伝子の導入や分化制御因子の併用によって、よりin vivoの細胞に近い新たな肺胞上皮II型細胞モデルを作出すること、および2)薬物による肺障害、特に線維化の分子機構を解明することを目的としている。得られた成果は以下のとおりである。1)前年度に、ラットABCA3遺伝子を培養肺胞上皮細胞RLE-6TNに導入して作出した細胞(RLE-ABCA3細胞)において、細胞の形質がII型細胞に向かうという結果を認めた。今年度はヒト由来A549細胞にヒトABCA3遺伝子を導入し、その影響を検討したところ、同様の知見を得た。従って、「ABCA3トランスポーター遺伝子の導入によって肺胞上皮細胞は全体的に形質がII型方向に変化する」という我々の仮説は動物種を越えて普遍的に成立する可能性が示唆された。2)RLE-6TN細胞を用い、肺の線維化を誘発することが知られている代表的薬物ブレオマイシンの影響について検討した。薬物濃度、処置時間、細胞播種密度などを変化させ、ブレオマイシンによるEMT誘発の有無を形態学的に調べたところ、例えば0.4 microMブレオマイシンで6日間処理することで、細胞が紡錘状に変化することを認めた。また細胞播種数によって違いはあるが、ブレオマイシン処置によって上皮系マーカーCK19、ZO-1、Ezrinの遺伝子発現は減少、間葉系マーカーFibronectin、Moesin、CTGFは上昇した。一方、TGF-beta1処置によってRLE-ABCA3細胞では、RLE-6TN細胞に比べより顕著なABCA3遺伝子発現の低下を認めたことから、RLE-ABCA3細胞は、EMT評価系としても有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト由来肺胞上皮細胞でもABCA3遺伝子導入による形質変化について所期の成果が得られたこと、薬物による肺胞上皮細胞の上皮間葉転換に関するデータが得られつつあるなど、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、ほぼ順調に研究が進展しているので、計画に沿って検討を進める予定である。新たに作出したABCA3遺伝子導入細胞の上皮間葉転換解析への応用についても進めていきたい。
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Research Products
(12 results)