2011 Fiscal Year Annual Research Report
kirrelファミリーによる神経回路網形成の制御と高次脳機能
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22390036
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
森川 吉博 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60230108)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 発現制御 / シナプス / 細胞接着分子 |
Research Abstract |
kirrel3ヘテロ欠損マウスを用いて、発達過程の脳におけるLacZの発現を検討した結果、胎生9.5日齢で後脳の神経上皮の辺縁層において発現を認め、嗅球、線条体、大脳皮質、小脳では胎生13.5日齢から、海馬では胎生17.5日齢から、主に分化した神経細胞が分布する部位に発現を認めた。海馬、及び小脳では、増殖細胞の分布する脳室帯や外顆粒細胞層の一部の領域においても発現が認められた。海馬歯状回では、生後7日齢で分化した神経細胞が存在する表層部にのみ発現が認められ、生後14日齢から21日齢にかけて、歯状回の深層にもその発現が認められるようになり、成獣においては、歯状回の全層にLacZの発現が認められた。小脳では、生後7日齢から14日齢にかけて、分子層、顆粒細胞層におけるLacZ発現細胞数が増加した。さらに、発達過程の網膜では胎生15.5日齢で発現を認め、胎生17.5日齢では多くの網膜神経節細胞に認められ、内顆粒細胞層の一部にも発現が認められた。生後7日齢から14日齢にかけては、内顆粒細胞層における発現が増加し、成獣においても発現が持続していた。 また、kirrel3ホモ欠損マウスは野生型マウスと比べ、ホームケージにおける活動量に差はみられなかったが、新規環境下での運動量の有意な増加を認めた。さらに、明暗選択テスト、及び高架式十字迷路テストを行ったところ、ホモ欠損マウスは総移動距離、及び明室・暗室間横切り回数が有意に増加していたが、不安傾向の指標となる明室滞在時間、及びオープンアーム滞在時間には差はみられなかった。受動的回避テストにおけるショック強度を検討するためのショック感受性テストを行ったところ、ホモ欠損マウスにおいて暗鳴反応が有意に低下していた。超音波音声反応における異常の有無を検討するため、新生仔、及び成獣マウスを用いて超音波音声を誘導する条件を決定し、現在、解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
kirrel3ヘテロ欠損マウスの脳や感覚器官におけるLacZ発現細胞の解析、及びkirrel3ホモ欠損マウスの行動解析結果より、kirrel3が発達過程、及び成獣の高次脳機能の獲得・維持に重要な役割を果たすことが示唆された。さらにショックに対する啼鳴反応の低下という非常に興味深い行動異常を発見したこと、及びkirrel3ヘテロ欠損マウスを用いた全組織の発現解析により、非常にマイナーな細胞群ではあるが、神経系以外の組織においてもいくつかのkirrel3発現細胞を検出したことなどから当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、1.kirrel3ヘテロ欠損マウスを用いたLacZ発現細胞の詳細な解析、2.発達過程や成獣の脳、及び感覚器官におけるkirrelファミリーの発現の検討、3.kirrel3遺伝子ホモ欠損マウスの組織学的解析(神経回路網の発達異常、シナプスの形成異常等)、4.kirrel3遺伝子ホモ欠損マウスの生化学的解析、及び5.kirrel3遺伝子ホモ欠損マウスの行動学的解析(高次脳機能異常の検討)を行う。さらに、薬剤投与による行動異常の変化の検討を行い、注意欠陥・多動性障害、双極性障害、自閉症、統合失調症等の精神疾患モデルマウスとなる可能性を探索することにより、kirrel3の神経回路網形成における役割とその異常が精神疾患の発症に関与する可能性を検討する。
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Research Products
(4 results)