2011 Fiscal Year Annual Research Report
性ホルモンによる脳内神経回路の再構成が思春期に固有の社会行動を発現する機序の解明
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22390043
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
佐久間 康夫 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70094307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 昌克 日本医科大学, 医学部, 准教授 (90143239)
木山 裕子 日本医科大学, 医学部, 講師 (60234390)
折笠 千登世 日本医科大学, 医学部, 講師 (20270671)
濱田 知宏 日本医科大学, 医学部, 助教 (90312058)
石井 寛高 日本医科大学, 医学部, 助教 (20445810)
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Keywords | エストロゲン受容体 / プロモータ / 転写調節 / 内側視索前野 / 性的二型 / 細胞移動 / GnRH / NKCC1 |
Research Abstract |
平成23年度にはエストロゲン受容体(ER)α遺伝子の転写翻訳調節に関わる塩基配列を解析し、ラット、ヒト、マウスの何れにおいても5'上流側のプロモータ構造が従来知られていたよりもはるかに複雑で、それぞれのプロモータが組織特異的・時期特異的に使用されることを報告した。転写の際にalternative splicingによりさまざまなmRNAバリアントを生じ、これらが翻訳効率あるいはmRNAの安定性の調節に関わり、ERα分子の発現調節やC端、N端を欠くERα分子の断片の生成を示した。Calbindin D28kの免疫組織化学により、これまで存在しないとされてきたマウス内側視索前野にラットと相同の性的二型核(SDN-POA)を示し、教科書的記述を覆す成果を得た。ERα遺伝子0/Bプロモータトランスジェニック(tg)ラットにおいてSDN-POAのニューロンが特異的に標識されることを発見し、これまで信じられてきたアポトーシスではなく、細胞移動がこの核の性差の成立に関わることを報じた。SDN-POAの機能については、発情雌に対する性指向性を失ったオキシトシンノックアウト雄マウスにおいても、正常雄と同等の大きさを持つSDN-POAが存在することから、この核が雄の性指向性の調節に関わるという従来広く信じられてきた仮説を否定する所見を得ることができた。エストロゲン作用による細胞移動の結果、SDN-POAの性差を生じることは、分子生物学的手法によりエストロゲンが新生仔ラット脳で活性化される遺伝子カスケードを同定し、cofillinリン酸化の結果、アクチンのダイナミクスの変化によりfilopodia形成に変化が生じることから証明した。ラットでは在胎14日に嗅上皮から脳内に移動してくる性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)産生ニューロンは成熟後も新生仔期の性質を保ち、NKCC1の発現が多く、KCC2の発現を欠くために、細胞内塩素イオン濃度が高く、GAB飴受容体の活性化が興奮を起こすこと、この興奮が細胞移動を始動する可能性をパッチクランプ法で詳細に解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マウス内側視索前野にラットと相同の性的二型核を認めたこと、ERα遺伝子0/Bプロモータトランスジェニックラットで性的二型核ニューロンが標識され、細胞移動により成立すること、広く抑制性伝達物質として知られているγアミノ酪酸がなどGnRHニューロンでは興奮を起こすことなど、複数の従来の教科書的知見を覆す大きな成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
エストロゲンが新生仔ラット脳で遺伝子カスケードの活性化を起こす際に関わる分子が既知の核内受容体であるのか、あるいは新規の膜受容体であるかを検討する必要があり、本研究計画の最終年度である平成24年度に検討を進める。
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[Presentation] エストロゲンと脳2011
Author(s)
佐久間康夫
Organizer
第17回早稲田大学「性と生殖」公開シンポジウム
Place of Presentation
東京都新宿区(国内学会・特別講演)
Year and Date
2011-12-04
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