2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22390054
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 九州大学, 生体防御医学研究所, 准教授 (30415195)
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Keywords | 肝臓 / 幹細胞 / 発生 / 再生 / 癌 |
Research Abstract |
肝臓は、血液細胞を含む複数種の細胞によって構成された集合体として機能しており、数が少なく、形態による識別が困難な肝幹細胞に的を絞った研究は極めて難しい。この問題に対し、我々は、フローサイトメトリーを用いた細胞分離とクローン解析という精度の高い実験手法を開発することで、肝幹細胞の分離と機能解析を可能にしている。そこで本研究では、これらの手法を駆使し、肝臓の発生過程、再生過程、腫瘍形成過程における肝幹細胞の特性制御機構の解明を試みる。肝臓の発生研究では、肝幹細胞の機能制御を担う転写因子やシグナル分子によって肝幹細胞の増殖と分化のバランスが適切に調節されるメカニズムを解析している。これまでの研究では、肝幹細胞の機能を制御する転写因子のジェネティック及びエピジェネティックな発現制御機構の存在を確認している。肝臓の再生研究では、肝再生及び肝幹細胞における転写因子やシグナル分子の役割を明らかにすべく、遺伝子改変マウスの作製と解析を進めている。その中で、肝再生における転写因子Snailの役割を解析した結果、肝再生シグナルに応じて誘導されるGSK-3β依存的なSnailの分解が肝細胞の増殖活性化のトリガーになっていることを見出した。肝臓における腫瘍形成の研究では、種々の遺伝子改変マウスを作製・解析中であり、特に、Notchシグナルが肝細胞の脱分化や形質転換に与える影響の解析を進めている。このように、本研究では、肝臓の発生過程、再生過程、腫瘍形成過程における肝幹細胞の特性やその制御機構を明らかにし、得られた知見を新しい肝再生誘導法や肝癌治療法などの開発に応用することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの作製や解析では時間を要しているが、その一方で、肝発生過程の幹細胞制御を担う分子メカニズムや肝再生機構の研究ではデータが得られており、肝臓の幹細胞システムの統合的理解に向けておおむね順調に研究が進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本研究の最終年度であることから、これまでに論文として発表した肝再生機構に関する研究に加え、肝臓の発生や腫瘍形成についてもそれぞれ論文を発表できるように研究を進めていく。結果として、基盤Bによって肝臓の発生や再生と疾患における幹細胞システムの研究基盤を構築し、その後の研究の発展に繋げていきたいと考えている。
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Research Products
(8 results)