2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22390056
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山田 雅巳 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (10322851)
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Keywords | 滑脳症 / カルパイン阻害薬 / LIS1 / 細胞内物質輸送 / 細胞質ダイニン / 神経遊走 / 微小管モータータンパク質 / 低分子量GTPase Rab6 |
Research Abstract |
カルパイン阻害薬による滑脳症治療薬の開発 まず本年度は、カルパイン阻害薬を滑脳症治療薬として治験・実用化に向けて開発する為の初期段階として、滑脳症疾患モデル動物(LIS1ヘテロ欠損マウス)を用いた簡便且つ再現性の高い薬剤(一次)スクリーニング法を確立する為に、in vivo神経細胞遊走活性の測定・評価方法を徹底的に見直し改善した。その結果、新規カルパイン阻害薬((1S)-1-((((1S)-1-Benzyl-3-cyclopropylamino-2,3-di-oxopropyl)amino)carbonyl)-3-methylbutyl)carbamic Acid 5-Methoxy-3-oxapentyl Esterが、LIS1ヘテロ欠損マウス由来の神経細胞に於いて著しく低下している遊走活性をほぼ野生型レベルまで回復させることがわかった。そこで、この新規カルパイン阻害薬が個体レベルでの滑脳症様症状を改善することができるかどうかを調べる為に、マウスの行動解析実験(Wire hangテスト、RotaRodテスト、Gait analysisテスト等)を行なった。これらの行動実験の結果、この新規カルパイン阻害薬は、LIS1ヘテロ欠損マウスに於いて観られる協調性運動失調、学習障害、鬱様行動等の行動異常を顕著に改善させることがわかった。これまでの私たちの研究成果に於いて、滑脳症様症状にその薬効が認められたALLNおよびE64dは、広汎なシステインタンパク質分解酵素阻害薬であったので、この新規カルパイン阻害薬が現時点では滑脳症治療薬の候補となりうる唯一の選択的カルパイン阻害薬である。また今回は、妊娠中の母体への経口投与でその薬効が認められたのみならず、生後新生児への強制経口投与によっても滑脳症様症状の改善の兆しが見られたことから、滑脳症治療薬の治験・実用化に向けての大いなる飛躍の1年であったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滑脳症治療法の開発の為、当初の「研究目的」「研究計画」に従って、本年度は薬剤一次スクリーニング方法の確立、選択的カルパイン阻害薬の暫定候補の決定および個体レベルでの薬効確認まで達成することができた由。
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Strategy for Future Research Activity |
滑脳症治療法の開発に於ける今後の研究推進方策を3つに大別して記した。 (i)本年度中に確立した滑脳症治療薬の薬剤一次スクリーニング法(LIS1ヘテロ欠損マウス由来の細胞を用いた神経細胞遊走活性測定法)により、さらに有効なカルパイン阻害薬の薬剤スクリーニングを行なう。 (ii)本年度中に滑脳症様行動異常を改善することが認められた新規カルパイン阻害薬に関して、さらに剤形、投与方法、特に新生児に対して有効な投与方法等を検討し、滑脳症治療薬の治験・実用化を目指す。 (iii)滑脳症疾患モデル動物として用いたLIS1ヘテロ欠損マウスの脳内のどの領域に於いて、その機能低下が顕著であるのかを^<18>F-fluorodeoxy glucose(フルオロデオキシグルコース、FDG)トレーサーとしたグルコース代謝測定法(ポジトロン断層法(positron emission tomography;PET)を用いて調べ、行動解析実験との相関を詳細に検討する。 滑脳症の発症分子機構の解明については、平成23年度中にブタ脳からの細胞質ダイニン、微小管の精製方法の確立、微小管in vitro motility assay法の確立、蛍光相互相関分光法(FCCS)、蛍光1分子イメージング法を立ち上げ、現在精力的にデータを蓄積あるいは解析中である。
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