2011 Fiscal Year Annual Research Report
小胞体ストレス応答シグナルによる糖・脂質代謝制御機構の解明とその臨床応用
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22390061
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
親泊 政一 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 教授 (90502534)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 雅人 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 特任助教 (30588976)
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Keywords | 小胞体 / ストレス / PERK / eIF2α / 糖代謝 / 脂質代謝 / 体内時計 |
Research Abstract |
小胞体ストレス応答の破綻により小胞体に蓄積する異常タンパク質は、糖尿病などさまざまな疾患の原因として注目されている。小胞体ストレス応答経路の中で、PERK経路は翻訳抑制と転写誘導を介して制御する複雑な応答である。その解析のために作製されたPERKノックアウトマウスは膵β細胞障害で糖尿病となる一方、PERKの下流であるeIF2αリン酸化部位のノックイン変異マウスは膵β細胞障害があるにも関わらず糖新生障害で低血糖と全く逆の表現型を示した。この複雑な表現型からPERK経路はこれまで知られていない代謝制御機構を持つことが明らかとなったが、これらのマウスは重篤な糖尿病や低血糖により生後すぐ死亡するので、さらなる解析が困難なことが技術的な問題点であった。この問題点を克服するために申請者らは肝臓、膵β細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞特異的かつ人工リガンド依存的にPERKを活性化してeIF2αをリン酸化するトランスジェニックマウスの作製を行った。平成23年度には、肝細胞特異的にPERKを活性化してeIF2αをリン酸化するトランスジェニックマウスを解析することでこれまで全く知られていなかったeIF2αリン酸化シグナルにより、糖代謝や脂質代謝制御に加えて、末梢体内時計の制御にも関与することを明らかにすることができた。近年、代謝異常と体内時計が関連することは、古くから知られていたが、その分子機構については不明な点がある。本研究により、タンパク質の折り畳み以外にも代謝の要となる小胞体からのシグナルが、体内時計の制御にもクロストークして生体機能を調節していることがわかったことは意義深く、今後、代謝治療の新たな標的となる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小胞体ストレス応答経路の中で、PERK経路のシグナルによる代謝制御の臓器ネットワークを明らかにすることが、本研究の目的である。そこで肝臓、膵β細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞といった代謝の要の臓器で、PERK経路のシグナルを臓器毎に解析するトランスジェニックマウスの作製に成功した。さらに、マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析も実施中である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓、膵β細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞といった臓器特異的に、PERK経路のシグナルを解析するトランスジェニックマウスでの遺伝子発現解析結果から、同じ起点のシグナルが臓器毎にどのように異なるかに注目して新たな代謝制御機構を同定する。トランスジェニックマウスの表現型の解析とあわせることでその仮説の精度を高め、最終的には再構成系において仮説の検証を行う。
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Research Products
(4 results)