2011 Fiscal Year Annual Research Report
膵との発生学的近似性、組織学的類似性からみた胆道疾患の新たな病因病態研究
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22390067
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中沼 安二 金沢大学, 医学系, 教授 (10115256)
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Keywords | 付属腺 / 胆道腫瘍 / 膵腫瘍 / 膵外分泌腺 / 胆道 / Hes1 / Pdx1 |
Research Abstract |
胆道と膵の発生・分化には共通する複数の遺伝子が関与しており、発生学的に近似性がある。本研究では、胆道疾患と膵疾患の病態形成には共通する疾患プロセスが存在するとの仮説を検証する。今年度は、正常の人体材料および腫瘍性の胆管・胆道疾患を中心に、免疫組織化学的手法とin situhybridization法により、胆道と膵の発生・分化には共通する複数の遺伝子発現を検討した。新たに得られた成績は以下の如くである。 1)ヒト正常胆管・胆道および膵組織での検討:胎児、新生児および成人の正常胆管・胆道および正常の膵組織を用いて検討した。正常の肝内胆管および肝外胆管の被覆上皮では、膵の発生に関係するPdx1の発現はみられなかったが、胆管周囲付属腺で腺房上皮の核に遺伝子および蛋白の発現がみられた。しかし、Ngn3,Sox9,epiplakin3の発現は見られなかった。陽性対照である成人膵組織の内分泌細胞にPdx1の発現がみられた。一方、膵への分化抑制因子であるHes1は、胆管および肝外胆管の被覆上皮に発現が見られたが、胆管周囲付属腺では発現が見られなかった。 2)胆道癌および胆管癌での検討:胆道癌および胆管癌では、Pdx1の発現が高率にみられた。しかし、陰性例も存在した。なお、対照として用いた膵癌でもPdxlの発現が見られた。 3)前癌病変biliary intraepithelial neoplasm(Bi1IN)やintraductal papillary neoplasm (IPN)での検討:Bi1INおよびIPNでの異型度が高くなるにつれ、Pdx1や Ngn3, Sox9, epiplakin3などの分発現がみられた。一方、膵への発生・分化を抑制するHeslは、腫瘍化あるいは癌化に際して、Pdx1とは逆の発現パターンを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胆道と膵の病態の共通性、類似性に関して、腫瘍,炎症の観点から研究が展開している。特に、前癌病変と初期癌病変の解析が進み、研究成果を欧米誌に掲載しており、国際的に認知されつつある。しかし、非腫瘍性胆管と膵管での遺伝子プロファイリングに関する研究は、十分な成果を上げていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1.非腫瘍性胆管と膵管での、遺伝子プロファイリングを進める。特に、幹細胞に関する研究を進め、発生から病態までのプロセスを、遺伝子レベルで解析する。 2.胆道および膵の腫瘍性疾患での共通する遺伝子発現を、発生過程での遺伝子発現との関連性で研究を進める。 3.炎症性の胆道および膵疾患で、共通する抗原成分の解析を試みる。特に、IgG4関連疾患では、胆道と膵に共通の像があり、共通する抗原が標的となっている可能性がある。
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