Research Abstract |
平成22年度は、インシデントレポートの約3割を占める転倒転落事例に関し、次の2点について明らかにした。 (1)転倒転落の発生頻度とリスクコストの算出:島根大学医学部附属病院(A病院)および聖マリア病院(B病院)は2007~09年度の3年間、京都大学医学部属病院(C病院)は2008年度1年間のインシデントレポートおよび医事データから、発生頻度とリスクコストを算出した。インシデントレポートは、A、B、およびC病院について各々4,175件、7,717件および4,086件で、転倒転落発生数(率)は1,190件(2.3患者・日)、1,790件(1.9)および561件(1.6)であった。また、レベル2以上の件数(医療費の確認できた件数および医事データから確認できた医療費)について、A病院は、レベル2が434件(155件、2,100千円)、レベル3aが136件(72件、6,199千円)およびレベル3bが5件(5件、2,168千円)、B病院は、レベル2が824件(205件、2,027千円)、レベル3aが298件(186件、2,304千円)およびレベル3bが46件(34件、7,709千円)であった。また、C病院は、レベル2が306件(59件、425千円)、レベル3aが82件(45件、435千円)およびレベル3bが5件(5件、16,678千円)であった。以上から、A病院のリスクコストはEx=C_2f_2+C_<3a>f_<3a>+C_<3b>f_<3b>=13,600x459/4,175+86,100x124/4,175+433,600x5/4,175=4,571円で、同様にBおよびC病院は各々2,927円および4,292円であった。 (2)転倒転落の分類に関する自動化の検討:研究チームの開発したシステムを利用して、A病院(2006~08年分全4,025件)およびB病院(2006~08年分全8,300件)のインシデントレポートを教師として、C病院のインシデントレポート(全8,306件、転倒転落1,081例を含む)を自動分類させたところ、A病院を教師として転倒転落と判定した事例数は928件、自動判定し正解した転倒転落事例数は873例で精度は94.1%(873÷928×100)および再現率80.8%(873÷1,081×100)で、同様にB病院を教師として自動判定した、および正しく自動判定した事例数は各々1,450件、1,041例であり、精度は71.8%および再現率は96.3%であった。これらより精緻化、自動化が可能であると考えられた。
|