2012 Fiscal Year Annual Research Report
腹部大動脈瘤におけるアドレノメデュリン・マスト細胞の意義と新たな治療法の開発
Project/Area Number |
22390161
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
北村 和雄 宮崎大学, 医学部, 教授 (50204912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴田 敏博 宮崎大学, 医学部, 講師 (10389570)
加藤 丈司 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (20274780)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アドレノメデュリン / 腹部大動脈瘤 / マスト細胞 |
Research Abstract |
アドレノメデュリン(AM)の腹部大動脈瘤発症・進展への関与を明らかにし、同疾患に対するバイオマーカーとしての有用性ならびに新規治療薬としての可能性を探ることを本研究の目的とする。我々は、AMが心血管の構築や機能変化に影響を及ぼすことをこれまでに報告してきた。正常血管壁におけるAMの主産生部位は中膜の平滑筋層であるが、腹部大動脈瘤においては菲薄化した平滑筋層におけるAMの染色性は低下し、一方、中~外膜に分布するマスト細胞からの産生が顕著となる。本研究では(1)ヒト腹部大動脈瘤患者の血中・組織中AM濃度の測定とPET-CTデータとの関連性を調査、(2)AMとアポリポプロテインEの両者を遺伝子改変させたマウスを作成して動脈瘤モデルの作成を試みることにより、動脈瘤形成におけるAM遺伝子の役割について引き続き模索する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
われわれは、アンジオテンシンII(1000 ng/kg/min)を負荷して作成されるマウスに腹部大動脈瘤モデルを用いた。AMとアポリポプロテインEの両者を遺伝子改変させたマウス(AM+/- apoE-/- マウス)(n=29)と、アポリポプロテインE遺伝子のみの欠損マウス(apoE-/- マウス)(n=18)の死亡率、大動脈瘤発生率、瘤最大径について比較検討したが、統計学的に有意差は認められなかった(AM+/- apoE-/- マウス vs. apoE-/- マウス; 死亡率: 6.8% vs. 5.2%, p = 0.7959、大動脈瘤発生率: 34.6% vs. 44.4%, p=0.5103、瘤最大径: 1.17±0.1 mm vs. 1.39±0.2 mm, 中央値±標準誤差, p = 0.612)。次にアポリポプロテインE欠損マウスにおいて、アンジオテンシンII負荷による動脈瘤モデルマウスにリコンビナントAMを28日間持続投与して、瘤形成に及ぼす影響について比較検討した。しかし、死亡率、大動脈瘤の発生率、瘤最大径について、いずれも統計学的に有意差は認められなかった(AM投与なし群 n=18 vs. AM 300 ng/kg/hr 投与群 n=11 vs. AM 3000 ng/kg/hr 投与群 n=20; 死亡率: 5.2% vs. 0% vs. 20.0%, p=0.1410、大動脈瘤発生率: 44.4% vs. 36.4% vs. 27.2, p=0.6481、瘤最大径: 1.39±0.2 mm vs.1.33±0.2 mm vs. 1.22±0.2 mm, 中央値±標準誤差, p=0.8933)。各群間で差が見いだせなかった理由として、観察期間が短かったことが考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は昨年度に引き続き、下記の3つのサブテーマで研究を進める。 (1)ヒト腹部大動脈瘤患者でのAMのバイオマーカーとしての有用性ならびに生物学的活性の意義: 腹部大動脈瘤を有する患者の採血、PET-CT、術中の組織入手を引き続き行い、血液中や組織中のAM濃度を測定する。患者背景、瘤の最大径、PET-CTの瘤壁の取り込み程度を比較検討し、バイオマーカーとしての有用性、病態形成へのAMの生物学的活性を考察する。 (2)腹部大動脈瘤マウスモデルにおける内因性・外因性AMの病態修飾: アポリポプロテインE欠損マウスにアンジオテンシンIIを負荷して作成される動脈瘤モデルにて、リコンビナントAMを投与したが28日間の観察期間では死亡率、瘤形成率、瘤最大径の程度に有意な差がみられなかった。それゆえ、アポリポプロテインE欠損+アンジオテンシンII動脈瘤モデルマウスにリコンビナントAMを2カ月以上持続投与することで、瘤形成に及ぼす影響について評価検討する。採取した血管はマクロで血管径を評価した後、組織学的観察ならびに分子生物学的評価を行う。 (3)培養マスト細胞、マクロファージ細胞におけるAMの腹部大動脈瘤発症、進展の分子メカニズムの探索: AM欠損マウスの腹腔からマスト細胞やマクロファージを単離・培養して、動脈瘤形成に関与するとされるマトリックスプロテアーゼ活性や炎症性サイトカイン遺伝子発現を野生型由来のそれと比較する。また、同細胞にリコンビナントAMを投与してプロテアーゼ活性や炎症性サイトカイン遺伝子発現などへの影響を観察する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Inhibition of development of abdominal aortic aneurysm by glycolysis restriction.2012
Author(s)
Tsuruda T, Hatakeyama K, Nagamachi S, Sekita Y, Sakamoto S, Endo GJ, Nishimura M, Matsuyama M, Yoshimura K, Sato Y, Onitsuka T, Imamura T, Asada Y, Kitamura K.
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Journal Title
Arterioscler Thromb Vasc Biol
Volume: 32
Pages: 1410-1417
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Angiotensin II-dependent osteoprotegerin production in murine and human heart.2012
Author(s)
Tsuruda T, Imamura T, Masuyama H, Sekita Y, Koyama S, Ideguchi T, Kawagoe J, Onitsuka H, Ishikawa T, Date H, Hatakeyama K, Asada Y, Kitamura K.
Organizer
European Society of Cardiology Congress 2012.
Place of Presentation
Munch, Germany
Year and Date
20120825-20120829