2012 Fiscal Year Annual Research Report
腎臓における新規の血圧調節機構WNK-NCCシグナル伝達系の解明
Project/Area Number |
22390168
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
頼 建光 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 准教授 (80334431)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 偽性低アルドステロン症II型 / KLHL3 / Cullin 3 / ユビキチン / SPAK / Na-K-Cl 共輸送体 / angiotensin II / OSR1 |
Research Abstract |
(1) 細胞内ユビキチン化によるWNK-NCCシグナル系の制御 偽性低アルドステロン症II型PHAIIの新たな原因遺伝子として、KLHL3、Cullin 3が同定された。WNKキナーゼ、KLHL3、Cullin3がどのようにPHAII発症に関与しているのかを探り、ヒトにおける新たな高血圧症発症機序の解明を試みた。細胞の強制発現系でKLHL3はWNK4およびCullin3と結合し、KLHL3の強制発現はWNK4ユビキチン化の増強とWNK4蛋白量の減少をもたらす一方、変異WNK4/KLHL3/Cullin3はこれらを阻害し細胞内WNK4蛋白量が増加した。以上より、WNK4のユビキチン化障害がPHAII発症の共通の病態であることが明らかとなった。 (2) 塩分摂取とangiotensin IIによる平滑筋WNK-SPAK-NKCC1シグナル系の制御 血管平滑筋のSPAKやNa-K-Cl 共輸送体(NKCC1)が血管のトーヌス制御に関わり、WNK-SPAK-NKCCカスケードが血管平滑筋においても重要な役割を担っている事が明らかになってきた。血管平滑筋におけるSPAK-NKCC1リン酸化の生体内での制御因子について検討するため、マウスに塩分負荷,angiotensin II投与を行った。その結果、低塩食群の血管平滑筋においてSPAKとNKCC1リン酸化は著明な亢進を認めた。また、angiotensin II投与をしたマウスでは血管平滑筋でのSPAK-NKCC1のリン酸化が亢進した.WNK3ノックアウトマウスでは,塩分負荷やangiotensin IIの投与によるSPAK-NKCC1のリン酸化の亢進はみられなかった。これより、塩分摂取は血管平滑筋においてangiotensin IIとWNK3を介して、SPAK-NKCC1リン酸化を制御することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の平成24年度当初の研究目的として、以下の点を挙げていた。 (1) WNK4-NCC リン酸化系とインスリンシグナル系のクロストークについて。インスリンから WNK4 リン酸化亢進にいたるまでの詳細なメカニズムにつき検討する。(2) 変異型WNK4が高血圧をきたすメカニズムの解明。(3) 血管のトーヌス調節におけるWNK-NCCシグナル伝達系の役割について。 (2) についてはWNK4-NCC リン酸化系の新たな制御因子KLHL3、Cullin3を見いだし、WNK4のユビキチン化障害がPHAII発症の病態であるという新知見を得た。(3) については血管平滑筋におけるWNK3-SPAK-NKCC1シグナル系の制御につき新知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで、野生型WNK4がNCCに対する正の制御因子であること、WNKシグナルは大動脈におけるNKCC1のリン酸化も制御し、血管トーヌスの調節に関わること、新たな制御因子KLHL3、Cullin3がWNK4と結合し、そのユビキチン化障害がPHAII発症の病態であるなどつき、新知見を得ることができた。本年度はWNKシグナル伝達系の全容解明に向け、以下のテーマにつき、研究を進める。 (1) WNK4-NCC リン酸化系とインスリンシグナル系のクロストークについて。(2) 変異型WNK4が高血圧をきたすメカニズムの解明。WNKキナーゼ、KLHL3、Cullin3のPHAII発症への関与と、これらによる新たな高血圧症発症機序の解明。(3) WNK4-NCC刺激伝達系阻害薬スクリーニングによる新規の高血圧治療薬の開発。 具体的には: (1) これまでこの系の刺激因子として、insulin-PI3K 系を同定した。本年度はこれをさらに発展させ、インスリンから WNK4 リン酸化亢進にいたるまでの詳細なメカニズムにつき検討する。(2) 変異WNK4/KLHL3/Cullin3による相互の結合阻害の詳細な様式を調べる。(3) この系の阻害剤は,降圧作用及び血管拡張作用というdual effectを持つ新規降圧薬となり得る。蛍光相関分光法(FCS)を用いてWNKおよびSPAKの既知の結合モチーフを介した結合をFCSで検出するハイスループット・スクリーニング系を確立し,得られた候補化合物の薬剤活性をin vivoで評価、候補化合物の絞り込みを行う。続いて毒性及び薬剤活性の改善を期待して化合物誘導体展開を行い、マウスに投与可能なレベルまでなった化合物においてWNKシグナルのアウトプットである各種SLC12A輸送体のリン酸化を調べる。
|