2010 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞を標的とする新たな急性骨髄性白血病治療法の開発
Project/Area Number |
22390197
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
北林 一生 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 部長 (20261175)
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Keywords | 白血病 / 幹細胞 / NPMc / YB-1 |
Research Abstract |
急性骨髄性白血病(AML)では、高頻度に核小体タンパク質Nucleophosmin(NPM)遺伝子に変異が見られる。その結果生じるNPM変異体は細胞質に局在するが、その機能は不明である。本研究は、NPM変異体がAML発症に寄与するメカニズムの解明を目指している。NPM変異体をマウスの骨髄細胞に発現させるとそのコロニー形成能が増加し、さらに白血病誘導能を持つ造血系の制御因子HoxA遺伝子の発現が増加することを明らかにした。HoxA遺伝子はNPM変異を持つAML患者のサンプルで発現が高いことが報告されている因子である。今までNPM変異体による細胞の白血病化をモニターする系は作られていなかったが、この系を用いてNPM変異体の機能を解析することが可能となった。また、NPM複合体を精製しYB-1が野生型NPMと結合する事を見いだした。この複合体に対するNPM変異体の影響を調べたところ、NPM変異体はYB-1と野生型NPMの結合を阻害することがわかった。一方、YB-1ノックアウトマウスでは胎児期の造血の場である胎児肝臓の発生が阻害されることが報告されているため、YB-1が造血系で機能している可能性が考えられた。そこでYB-1ノックアウトマウスを用いてYB-1の造血系における機能解析を行ったところ、YB-1が胎児期の初期の造血の場である卵黄嚢とAGM領域の細胞のコロニー形成能に必要な因子であり、またHoxA9遺伝子の発現を正に制御していることがわかった。NPM変異が関与する白血病におけるYB-1の役割を明らかにするため、YB-1ノックアウトマウス由来の胎仔肝臓細胞にNPM変異体を発現させたところ、コロニー形成能の増加とHoxA遺伝子発現の誘導が著しく阻害された。したがって、NPM変異体によるAML誘導能にはYB-1が必要である可能性が示唆された。
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