2010 Fiscal Year Annual Research Report
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22390220
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
橋本 謙二 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 教授 (10189483)
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Keywords | 統合失調症 / D型セリン / NMDA受容体 / D型アミノ酸 / D型アミノ酸酸化酵素 / グルタミン酸受容体 |
Research Abstract |
これまでの多くの研究から、D型アミノ酸の一つであるD型セリンを介するNMDA受容体機能低下が統合失調症の病態に関与していることが報告されている。脳内のD型セリンはセリンラセマーゼ(SRR)によってL型セリンから合成される事が知られている。一方、SRRは末梢臓器にも存在する事が報告されているが、現在のところ、SRR遺伝子欠損マウスの末梢臓器における報告は無い。今回、SRR遺伝子欠損マウスにおける脳および末梢臓器におけるDセリンなどのアミノ酸濃度(NMDA受容体に関連したアミノ酸)を測定した。SRR遺伝子欠損マウスの前頭前皮質や海馬におけるDセリン濃度は、野生型マウスと比較して有意に減少した。成熟したマウスの小脳におけるDセリン濃度は、前頭前皮質や海馬と比較して著しく低く、SRR遺伝子欠損マウスと野生型では大きな差は見られなかった。各種末梢臓器におけるDセリン濃度は、脳と比較するとかなり低濃度であるが、肝臓、腎臓、精巣、精巣上体などにおいてSRR遺伝子欠損マウスにおいて有意に減少していた。一方、他のアミノ酸(Lセリン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン)濃度は両群で差は認められなかった。本研究結果より、脳におけるDセリンはSRRによって合成されていることが確認できた。またSRR遺伝子欠損マウスの脳および末梢臓器において微量のDセリンが検出されたことから、体内におけるDセリンはSRR以外の関与が示唆された。
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