2012 Fiscal Year Annual Research Report
個人差を克服しうる自家細胞治療における品質予測・適正化システムの開発
Project/Area Number |
22390243
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片野 尚子 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (50376620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 秀晃 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70322071)
松下 まりも (佐藤 まりも) 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50401253)
中村 貴史 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70432911)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トランスレーショナル・リサーチ / 再生医療 |
Research Abstract |
自家細胞治療は、再生医療・移植・細胞療法のいずれの分野においても有望な新規治療法であるが、患者自身から調製した細胞試験薬の品質が症例ごとに異なることが、治療の奏功に直結する高品質な細胞の安定供給を困難とし、しいては円滑な臨床試験の実施の妨げとなっている。患者由来細胞を用いることによって生じやすい、調製細胞の品質における個体差を補正し、患者個人のウイルス疾患罹患歴に起因する潜伏ウイルスの再活性化など、試験薬の安全性や投与後動態に影響を与えるリスクを最小化することによって、個体差を克服しうる自家細胞治療における品質予測・適正化システムを開発することを目的とする。 本研究はこれまでに自家細胞治療モデルとして血液細胞を加工するがん免疫治療を取り上げ、 「ex vivo細胞調製における品質予測と検証」 「調製細胞のin vivo活性の予測と検証」 「ウイルス疾患罹患歴に対応した細胞試験薬の安全性リスクの予測と検証」の3つの観点から、その品質予測・適正化システムを検討していたが、本年度はがん免疫治療以外の自家細胞治療においても、この品質予測・適正化システムの必要性があるかどうかを確かめるために、新たな細胞加工品モデルの探索・検討を行った。その結果、角膜上皮再生医療がより適切なモデルとなる可能性が判明した。そのため、角膜上皮再生医療の前臨床研究から臨床研究までの内容を具体的に解析し、これを実験モデルとして再構築する試みを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
私たちはこれまで遺伝子発現アデノウイルス導入樹状細胞を用いたがん免疫治療の実用化を目指した研究に取り組んできたが、自家細胞を用いる治療においては、患者自身に由来する細胞の個体差が細胞加工の出発点にあることから、その差を予測し・細胞加工工程の中で、その差を寛容し適正化する仕組みが必要であると考えた。この問題はがん免疫療法に限らず、細胞加工を必須とする再生医療においても重要な問題であると考えられたため、がん免疫治療モデル以外の検討モデルが成立する可能性について探索し、再生医療分野の再生角膜上皮細胞シート移植が自家治療における個体差問題を解決するための新たなモデルになりうるということを示した。トランスレーショナル・リサーチとして研究の進捗や周辺技術の発展に応じて柔軟に研究を進めた点は評価できるが、本研究成果が、未だ学会発表のみで、論文投稿準備中であることから自己点検による評価を、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討で角膜上皮再生医療が本課題の目的を達成する上で、より適切なモデルとなる可能性が判明した。そこで、今後は角膜上皮再生医療の臨床研究の内容を具体的に解析し、これを現在のヒト幹を用いた臨床研究の指針を遵守して実施するという観点から再構築した上で、実験モデルを構築し、細胞加工品の調製・ウイルス検出、ならびに、活性測定・品質測定の手法を検討する。また、本研究で対象とする新たな実験モデルが注目を浴びている再生角膜の臨床研究であることから、研究活動の内容や成果を社会・国民に対して分かりやすく説明する、双方向コミュニケーション活動(「国民との科学・技術対話」)にも活用する方法についても探索、ならびに検討を行い、研究結果の発表を積極的に行っていく。
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