2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトHER2分子の細胞外ドメインを発現する腫瘍融解ウイルスによる胃癌分子治療開発
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22390256
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤原 俊義 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00304303)
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Keywords | HER2 / ADCC / 乳癌 / 胃癌 / アデノウイルス / 分子標的医薬品 / 抗体医薬品 / トラスツズマブ |
Research Abstract |
ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陽性胃癌患者において、標準的な化学療法にヒト化モノクローナル抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン)を追加することで生存期間の有意な延長が認められる。抗体医薬品の作用機構の主体は抗体結合による細胞内シグナル伝達の阻害であるが、免疫細胞によるADCC(antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity、抗体依存性細胞介在性障害作用)もその治療効果に関与していると考えられている。本研究では、癌細胞表面にシグナル伝達機能を持たない標的分子の細胞外ドメイン(ECD、extracellular domain)のみを人工的に過剰に発現させ、HER2分子の細胞外領域のエピトープ(aa529-625)を認識するトラスツズマブの結合を促進し、ADCC活性を選択的に増強させることでHER2陰性胃癌患者に対する新たな治療戦略の開発を目指す。 本研究では、初年度にプラスミドにてHER2-ECDを発現させることで、低HER2発現ヒト癌細胞に末梢血単核球(PBMC)存在下にトラスツズマブのADCC活性の増強が認められた。本年度は、HER2/ECD遺伝子を組み込んだ非増殖型アデノウイルスベクターAd-HER2/ECDを用いた検討を行った。まず、Ad-HER2/ECDの感染によって非常に強力なHER2-ECD発現が誘導されることを、ウエスタンブロット解析、フローサイトメトリ-解析にてヒト乳癌細胞MCF-7、MDA-MB-231、およびヒト胃癌細胞MKN1、MKN28で検証した。また、それぞれのAd-HER2/ECD感染細胞でトラスツズマブの結合能が増強していることをフローサイトメトリ-にて確認した。さらに、Ad-HER2/ECD感染MCF-7、MDA-MB-231、MKN1、MKN28細胞を標的細胞とし、トラスツズマブとPBMCを加えた51Cr遊離アッセイを行ったところ、すべての細胞において有意なADCC活性の増強が認められた。次年度は、このAd-HER2/ECDを用いてトラスツズマブ耐性ヒト癌細胞におけるADCC活性の増強を検討するとともに、増殖型アデノウイルスへのHER-ECDの組み込みを試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にプラスミドを用いた実験で本研究のコンセプトが実証でき、本年度でウイルスベクターを用いた高発現系でトラスツズマブのADCC活性が有意に増強することが確認できた。当初の計画では、HER2-ECD遺伝子を増殖型ウイルスベクターに搭載予定だったが、ウイルスそのものが殺細胞効果を有した場合、ADCC活性の増強が正確に評価できないため、計画を変更し期待通りの結果が検証できている。したがって、計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のごとく、HER2-ECD遺伝子の増殖型ウイルスベクターへの搭載が有用かどうか判断は難しいが、前段階としてトラスツズマブ耐性機構の解析を行い、HER2発現変化に基づき今後の研究計画を調整していく予定である。また、ADCCとは異なるトラスツズマブの効果増強の可能性として、毒素を結合した抗HER2抗体の可能性を新たに検証する。
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Research Products
(4 results)