2010 Fiscal Year Annual Research Report
悪性神経膠腫におけるCOX-2の発現意義と治療への応用
Project/Area Number |
22390279
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉本 幸司 九州大学, 大学病院, 講師 (70444784)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝口 昌弘 九州大学, 大学病院, 講師 (50380621)
天野 敏之 九州大学, 大学病院, 助教 (70448413)
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Keywords | 悪性神経膠腫 / COX-2 |
Research Abstract |
本年度は悪性神経膠腫におけるCOX-2の発現意義とその機能解明を目指した実験を行うべく、その実験モデルの確立を中心に行った。まず最初にin vitroのモデルとしてグリオーマ幹細胞を分離、同定することを試みた。これは血清条件下で培養されたグリオーマ培養細胞は培養操作によって元の腫瘍とは違った遺伝子変化が起こり必ずしも元の腫瘍の治療感受性を反映しないこと、またグリオーマ幹細胞が治療感受性を規定する細胞であることが最近明らかにされてきたからである。具体的には悪性神経膠腫患者から摘出した腫瘍細胞を無血清条件のもとEGF、FGFなどの成長因子を加えた状態でprimary cultureすることでneurosphereを形成した細胞を分離し継代した。3-4継代後からはラミニンコートした状態で培養しすることで接着細胞として培養を継続した。この操作を行うことでこれまでに4例の長期培養可能な細胞を樹立した。これら4例の細胞は遺伝子発現において、血清条件下で長期培養されたU87、T98G、U251などの細胞と比較して幹細胞マーカーを多く発現しており、遺伝子発現プロファイルも元の腫瘍細胞と近い状態に保たれていることをreal time rt-pcrで確認した。現在これらの細胞をマウスに移植して腫瘍形成能を解析することで腫瘍幹細胞能を評価している段階であるが、これらの細胞はCOX-2の機能意義を解析する上で有用なin vitroのモデルとなると考えられる。次にin vivoの腫瘍モデルとしてPDGF遺伝子とGFP遺伝子を組み込んだレトロウイルス(pQ-PDGF-IRES-GFP)を作成し、これをSDラットの脳内に移植することで、非常に高率に悪性神経膠腫を形成するラット腫瘍モデルを確立することを目指した。このモデルの特徴は、腫瘍細胞が非常に高い浸潤能を有し、glomeruloid typeの血管新生、pseudopalisading necrosisなど膠芽腫の臨床上の特徴を再現できる点である。また腫瘍細胞がGFPを産生するので蛍光顕微鏡を用いて、簡単に腫瘍細胞の浸潤を評価できる。本年度はPDGF遺伝子を組み込んだレトロウイルスを作成し、SDラット内に定位的に注入し、腫瘍形成能を確認している段階である。このin vitroとin vivoの両方の腫瘍モデルを用いて次年度の研究を進める予定である。
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