2011 Fiscal Year Annual Research Report
荷重の増減による間葉系幹細胞から骨・血管・脂肪への分化調節機構の解明とその制御
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22390295
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90248576)
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Keywords | 荷重 / 骨髄細胞 / 骨芽細胞 / 脂肪細胞 / 血管内皮細胞 / 骨形成 / CD38 / CD31 |
Research Abstract |
荷重の増減による間葉系幹細胞の分化調節機構を解明し、その制御法を開発することを目的に研究を行っている。平成23年度は、マウス脛骨骨髄における間葉系幹細胞から骨芽細胞、血管内皮細胞、脂肪細胞への分化に及ぼす荷重の影響について組織学的所見と分化に関連する遺伝子発現から明らかにした。具体的には、非荷重モデルとして、尾部を懸垂して後肢を非荷重にしたマウスを用いた。1週間非荷重にしたあと、尾部懸垂を止め再荷重した。脛骨を採取し、脛骨二次海綿骨における骨形態計測と骨髄細胞を用いた定量的RT-PCRとフローサイトメトリーを行った。その結果、非荷重後1週で海綿骨量は約50%に減少し、骨髄細胞では骨芽細胞への分化が障害され、脂肪細胞への分化が促進された。骨髄細胞中におけるosterixとosteocalcin mRNAの発現が低下し、PPAR γ mRNAの発現が亢進した。血管関連因子では、非荷重状態の骨髄細胞におけるCD31(PECAM-1)とその受容体CD38の発現が低下し、Tie-2発現が骨梁付近の骨髄腔で低下した。非荷重後の再荷重によりこれら血管関連因子発現は正常荷重レベルに回復した。これらの結果は、CD38ノックアウトマウスが骨形成低下と骨量減少を示すという過去の報告と一致している。骨芽細胞株のMC3T3-El細胞にCD38陽性骨髄細胞を添加し共培養した群では、MC3T3-E1細胞単独群と比較してアルカリフォスファターゼ活性が増強した。CD38陰性骨髄細胞を添加し共培養した群では増強しなかった。非荷重状態の骨髄細胞ではTリンパ球のマーカーであるCD3eの発現が低下していた。今後は、CD38陽性細胞による骨芽細胞分化制御機構やTリンパ球の関与を明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
荷重の増減による間葉系幹細胞の分化調節機構を解明し、その制御法を開発することを目的に研究を行っている。平成22年度は、クライミングマウスを用いた荷重負荷の研究結果から、骨・脂肪・血管それぞれの分化マーカーについて発現の時期と局在を明らかにした。平成23年度は、尾部懸垂マウスを用いた非荷重と再荷重の研究結果から、骨形成系シグナルと血管系シグナルの関連性を明らかにした。研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
荷重の増減により、間葉系幹細胞から骨・脂肪・血管へどのように分化の振り分けが行われるかを解明する。荷重負荷により誘導される分子シグナルと非荷重により誘導される分子シグナルが、単なるon/offの関係ではないことから、今後も、クライミングマウスを用いた荷重負荷実験と尾部懸垂マウスを用いた非荷重実験の両方で推進していく。手法としては、骨形態計測、骨髄細胞を用いたRT-PCR、フローサイトメトリー、細胞培養を用いる。骨芽細胞、脂肪細胞、血管内皮細胞への分化関連タンパクと遺伝子の解析を中心に進める。また、aldehyde dehydrogenase-2(Aldh2)遺伝子欠損マウスなどの遺伝子改変マウスを用いて、荷重の増減に対する反応を調べていく計画である。
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Research Products
(4 results)