2010 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的ゲノム解析による前立腺癌バイオマーカーの探索
Project/Area Number |
22390306
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
中川 英刀 独立行政法人理化学研究所, バイオマーカー探索・開発チーム, チームリーダー (50361621)
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Keywords | 前立腺癌 / SNP / GWAS / NKX3.1 / 8q24 / ゲノム |
Research Abstract |
様々な癌種の中で最も遺伝的素因が強いものと考えられる前立腺癌に対して、欧米を中心にGWAS (genome-wide association study)が施行され、30個以上の前立腺癌関連の遺伝子多型(SNP)が同定されてきている。日本人における前立腺癌の関連遺伝子を見いだすため、合計4,584名の前立腺癌群と8,801名の対照群について、約50万個のSNP関連解析を行った。その結果、これまで欧米で報告されている31個のSNPのうち19個について、日本人の前立腺癌との関連が確認できた(最大のオッズ比は1.75倍)。一方、残りの12個のSNPは、日本人の前立腺癌との関連は確認できなかった。今回、新たに5つのSNPが日本人の前立腺癌と強い関連があることを発見した。この5つのSNPは、5p15領域(オッズ比1.26倍)、性ホルモンの産生やメタボリック症候群と関係のあるGPRC6A/RFX6遺伝子(オッズ比1.22倍)、13q22領域(オッズ比1.15倍)、機能不明のC2orf43遺伝子(オッズ比1.15倍)、転写因子のFOXP4遺伝子(オッズ比1.15倍)に存在していた。次に、2つの前立腺癌関連領域について関連遺伝子の同定とそれらの機能解析を行った。日本人の前立腺癌と最も強い関連を認めた8q24領域には蛋白質をコードする遺伝子は存在しないが、今回初めて、10kb以上の長いncRNA(蛋白質をコードしない遺伝子)が存在することを見出し、その発現は前立腺癌細胞株の増殖およびアンドロゲン受容体の活性に強く影響を与えることを証明した。また、8p12領域においては、前立腺の分化や増殖に重要な役割を担うNKX3.1遺伝子が関連し、この領域のSNPはNKX3.1遺伝子の前立腺組織での発現に影響を与えることによって、前立腺癌の発生に関与することを見出した。
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