2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経再支配を目指した喉頭麻痺治療法の開発に関する基礎的臨床的研究
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22390316
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
湯本 英二 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 教授 (40116992)
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Keywords | 脳・神経 / 喉頭麻痺 / 反回神経 / 神経再支配 |
Research Abstract |
基礎研究では、ラットを用いて反回神経脱神経後の甲状披裂筋に対して頸神経ワナから作製した神経筋弁移植術を行い、Caチャンネル拮抗剤ニモジピン投与の神経再支配促進効果を検討した。まず、脱神経後、即時に神経筋弁移植術を行い、ニモジピン投与群と非投与群で処置の2,4,10週後に評価した。その結果、筋活動電位は2,4週後、筋断面積は4週後、神経筋接合部は4,10週後にニモジピン投与群において有意に増加しており、神経再支配が強化されかつ早期から起こることが分かった。次に、長期脱神経後におけるニモジピンの効果を検討した。脱神経0,8,16,32週後に神経筋弁移植術を行い10週後に投与群と非投与群を評価した。その結果、ニモジピンによって筋断面積は脱神経8,32週後、神経筋接合部は8週後、MyHCタンパクは0,16,32週後の群で有意に増加しており、長期脱神経後でもニモジピン投与が神経再支臨床研究では、平成22年度に行った披裂軟骨内転術(以下、内転術)あるいは内転術と甲状軟骨形成術I型の併用(以下、内転術+I型)6名と内転術に神経筋弁移植を行った6名に加えて平成23年度に行った、それぞれ2名、12名の発声機能を追跡中である。平成23年3月までに行った症例数はそれぞれ35名、49名で1年以上にわたって発声機能を追跡してきた。現在までの分析で、最長発声持続時間、ピッチのゆらぎ、HNR、声の聴覚印象が術後2年にわたって有意な改善を示すことが分かった。この結果は、喉頭麻痺による高度嗄声の治療に神経筋弁移植術が有効であり、甲状披裂筋の神経再支配が長期間にわたって起こることを示唆すると考えられた。平成24年度も新たな症例を加えそ引き続き検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基碇研究では、反回神経脱神経が長期間に及んだ後でも甲状披裂筋の神経再支配が起こること、神経再支配は頸神経ワナを介して起こること、Caチャンネル拮抗剤が神経再支配を促進しうることを明らかにした。臨床研究では、症例が順調に集積されつつあり、9割以上の例で定期的な経過観察と発声機能検査を行ってきた。いくつかのパラメータは術後1年以上にわたって有意な改善がみられており、基礎研究の結果と合わぜて、頸神経ワナを用いた神経筋弁移植術が喉頭麻痺による高度嗄声の治療に有効であることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎研究では、ニモジピン投与が単に神経再支配を早期から起こすだけなのか、あるいは神経再支配の程度を増強するのか、さらに検討を進める予定である。臨床研究では、症例の集積を進め、披裂軟骨内転術(内転術)あるいは内転術+甲状軟骨形成術I型を行った症例群と発声機能を詳細に検討比較する。
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