2011 Fiscal Year Annual Research Report
眼圧依存性視神経障害の発症メカニズムの解明と他覚的解析方法の確立
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22390324
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
根木 昭 神戸大学, 医学研究科, 教授 (00189359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 誠 神戸大学, 医学研究科, 講師 (80273788)
山田 裕子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (00359861)
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Keywords | 緑内障 / 網膜神経節細胞 / アストロサイト / 多局所視覚誘発電位 / 眼圧 |
Research Abstract |
水チャンネルaquaporin(AQP)は、神経細胞の活動に必須な水分子の輸送を行う選択チャンネルである。今回我々は自然発症糖尿病ラット網膜において、網膜神経線維がAQPOを新たに発現することを蛋白と遺伝子レベルで示した。以前我々は網膜表層のアストロサイトがこのラットでAQP1を発現するようになることを報告したが、今回の発見と合わせ、糖尿病では網膜内層において神経節細胞とアストロサイト間のAQP発現変化を介した水や物質の授受に障害を来たしている可能性が示された。一方、昨年度にラット視神経においてAQP9の発現が慢性高眼圧下で消失していることを報告したが、同様の変化がサル高眼圧ならびにヒト緑内障眼の視神経でも生じていることを示した。AQP9はaquaglyceroporin familyに属し、水以外にも乳酸やグリセロールなどの溶質を輸送する。近年、乳酸はブドウ糖と同様に、アストロサイトから神経細胞へ供給されるエネルギー基質としての役割を果たすことが知られるようになった。緑内障性視神経症の病因のとして、視神経乳頭での水チャンネルAQP9発現の低下が関与している可能性が考えられる。 黄斑部視機能を他覚的に解析できる多局所視覚誘発電位(mfVEP)について、昨年度日本人における至適記録条件を確立した。今回この正常データベースを基に緑内障患者への応用を試みた。後頭結節をまたぐ水平・垂直ニチャンネル電極設置と、信号窓と雑音窓における信号雑音比の受信者操作特性曲線解析により、mfVEPは、自覚的静的視野検査と同等の診断能を有し、視野欠損半視野も一致していた。また定量的にも視野感度低下量とmfVEPの信号雑音比指標の低下量は相関していた。以上より、我々の確立した記録方法により、mfVEPは他覚的に緑内障性視野障害を検出できる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りの成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
基礎的には、AQP発現変化が網膜神経節細胞死や軸索輸送蛋白の発現等とどのような関係があるのかを、主に培養網膜細胞を用いてAQPや軸索輸送蛋白のsiRNAによるノックダウンを行うことで解明していく予定である。臨床的には緑内障性視神経症を含めて各種視神経症では網膜神経節細胞や神経線維といった構造の喪失と視野に代表される機能変化との対応と相関性が診断や病態解明に重要である。本年度はmfVEPと光干渉断層計で計測した構造変化との対応を緑内障ならびにその他の視神経疾患患者を対象にして解析する予定である。
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Research Products
(4 results)