2011 Fiscal Year Annual Research Report
光イメージングによる癌転移機構解明-メラノーマがリンパから血流に入る瞬間を捉える
Project/Area Number |
22390330
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 洋志 北海道大学, 大学院・医学研究科, 講師 (00399924)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 有平 北海道大学, 大学院・医学研究科, 教授 (70271674)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
舟山 恵美 北海道大学, 大学院・医学研究科, 助教 (10533630)
林 利彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (00432146)
尾崎 倫孝 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特任教授 (80256510)
|
Keywords | 悪性黒色腫 / 転移 / リンパ浮腫 / リンパ節 |
Research Abstract |
【目的】本研究課題は、リンパ節が血流とリンパ流を繋ぐ"道"として 作用していることを証明し、その"道"が悪性黒色腫の転移にどのように関与しているかを解明することを最終目的としている。今年度はリンパ節が実際に悪性黒色腫の転移にどのように関与しているかをマウスを用いた実験によって明らかにすることを目指した。即ち、リンパ行性にリンパ節へ転移した悪性黒色腫細胞が、リンパ節内の高内皮細静脈から血流に侵入し、遠隔転移を来たすという転移経路の証明である。 【方法】腫瘍細胞が転移の過程でリンパ節に到達できない状態では、仮説が正しければ遠隔転移が減少すると考えられる。そのような状態をマウスで再現して、悪性黒色腫細胞を移植し、遠隔転移の発生頻度を観察することとした。局所のリンパ流がリンパ節に到達できない状態というのは、リンパ浮腫に相当する。そのため、マウスの後肢をリンパ浮腫状態にして、足底に悪性黒色腫細胞を移植する実験を行うこととした。マウス後肢リンパ浮腫の作成には、過去にラットのモデルとして報告のあった方法を応用した。鼡径部への放射線照射と、顕微鏡下手術でのリンパ管の結紮・リンパ節の切除、および全周性の膚欠損を作成した。そうしてリンパ浮腫状態となったマウスの足底に、悪性黒色腫細胞を移植した。一定期間経過後にマウスの肺を摘出して肺転移した細胞の量を、通常のマウスと比較した。 【結果】蛍光リンパ管造影および脚の周径測定によって、放射線照射と手術操作を組み合わせることでマウスの後肢リンパ浮腫モデル作成に成功したことを確認した。リンパ浮腫マウスの足底に悪性黒色腫細胞を移植すると、通常のマウスと比較して肺転移は増加した。 【考察】リンパ節内の血流とリンパ流をつなぐシャントを介して、悪性黒色腫細胞が遠隔転移しているという仮説の証明を目指して研究を行ったが、実際に得られた結果は仮説とは正反対であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
証明しようとした仮説とは反対の結果であったが、悪性黒色腫の転移経路に関して今まで全く知られていなかった新たな知見が得られた。当初の計画とは方向性が異なるものの、今年度に作成した動物実験モデルを用いて、悪性黒色腫の転移に関して更なる検討を行うことによって、様々な新発見が期待できるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説とは反対にリンパ浮腫状態では遠隔転移が増加した要因について、本年度作成した動物実験モデルを用いて更なる検討を行っていく予定である。リンパ浮腫状態の動物に腫瘍細胞を移植するという実験系は過去に報告が無いため、更なる検討を行っていくことによって、悪性黒色腫の転移に関して未だ解明されていない様々な新知見が得られることが予想される。
|
Research Products
(2 results)