2011 Fiscal Year Annual Research Report
難治性がん性疼痛緩和のための痛みの病態生理に立脚した新たな治療法の開発
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22390349
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森田 克也 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 准教授 (10116684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 友也 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教 (60363082)
本山 直世 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助教 (70509661)
北山 滋雄 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (80177873)
白石 成二 国立がん研究センター研究所, がん疼痛研究室, 室長 (90216177)
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Keywords | がん性疼痛 / グリシントランスポーター / グリシントランスポ一ター阻害薬 / 血小板性化因子(PAF) / PAF受容体拮抗薬 / グリシン受容体 / 下降性痛覚抑制系 / モルヒネ |
Research Abstract |
申請者らは平成22年度の研究において, グリシントランスポーター(GlyT)阻害薬および血小板活性化因子(PAF)受容体拮抗薬ががん性疼痛モデル動物において長期間持続性で強力な疼痛緩和作用を示すこと, 更にこれら阻害薬はモルヒネとの併用によるBiomedical Modulationを明らかにした. 本年度はメカニズム等について更に詳細に検討し, 以下の結果を得た. ・RNA干渉及び薬理学的手法により, GlyT阻害薬およびPAF拮抗薬は脊髄のグリシン受容体α3機能を賦活して強力な鎮痛効果を惹起することを明らかにした. ・GlyTs阻害薬及びPAF拮抗薬とモルヒネの併用による鎮痛作用は強力で臨床応用上問題となるモルヒネによる便秘が, もはや問題とならない低濃度で十分な鎮痛を得ることが出来た. 更に, GlyT阻害薬とPA拮抗薬の併用でも相乗作用を認め, これにモルヒネを加えた3者併用では更なる鎮痛効果の増強を認め, これら薬物の併用の有用性を明らかにした. ・がん性疼痛モデル動物の脊髄で, 誘導型PAF生合成酵素(LPCAT2)が長期間にわたり増加していることを認め, 脊髄LPCAT2をノックダウンすることで, 強力で非常に長期間持続する鎮痛効果を得ることが出来た. ・現在, がん治療で問題となっている抗がん剤による神経傷害性疼痛に対しても, GlyT阻害薬, PAF受容体阻害薬, 脊髄LPCAT2ノックダウンは強力な緩和作用を示した. とりわけ, PAF受容体阻害薬及びLPCAT2ノックダウンは有効で, 使用方法によっては疹痛の発現予防的に使用できることを明らかにした. これらの成果より, 難治性がん性疾痛に対するGlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬の有用性が実証された. これら薬物はターミナルケアにおける重要な薬剤としても位置づけられ, 臨床応用を目的としたトランスレーショナルリサーチへの展開が期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
難治性がん性疼痛モデル動物で, GlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬が強力な鎮痛作用を発揮すること, 更にがん性疼痛緩和治療のスタンダードとして使用されているモルヒネとの併用により, モルヒネの臨床応用上最も問題となる便秘を引起すより低用量で十分な鎮痛作用を発揮することを見出し, そのメカニズムの一端を明らかにすることが出来た. 加えて, がん性疼痛の発症と維持にPAF合成酵素の誘導が重要な役割を果たすことを明らかにした等, おおむね研究目的は達成されている.
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Strategy for Future Research Activity |
難治性がん性疼痛に対するGlyTs阻害薬およびPAF受容体拮抗薬の有用性が実証された. これら薬物はターミナルケアにおける重要な薬剤としても位置づけられる. 本研究課題の今後の推進方策としては, ①詳細な作用様式の解明, ②より有益な使用法の探索, ③副作用・有害作用発現の有無についての詳細な検討より, 臨床応用を目的としたトランスレーショナルリサーチへの展開を視野にいれた研究を遂行する.
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Research Products
(9 results)