Research Abstract |
癌細胞表面の糖鎖構造の異常は転移・浸潤などの悪性挙動に深く関与することが知られている.糖転移酵素GnT-Vは,ノックアウトマウスの解析結果より,癌の転移・浸潤を促進する分子であることが報告されている.高転移性の癌細胞におけるGnT-Vの活性は高いことが報告されており,GnT-Vによる糖鎖修飾によるプロテアーゼ活性の変化,最近発見されたGnT-V自身が有する血管新生の機能が関与すると考えられている.そこで本研究では,GnT-Vの発現が亢進している胆嚢癌に着目し,胆嚢癌の悪性挙動に関与するGnT-Vの腫瘍生物学的意義を明らかにするために,siRNA処理を行うことによりGnT-Vの発現と活性レベルの異なる3種類の胆嚢癌細胞株を構築し,それらの腫瘍生物学的形質について比較検討を行った.胆嚢癌細胞株(TGBC44-TKB)に対してsiRNA処理を行い,GnT-V発現をノックダウンした細胞を構築し,GnT-V発現レベルおよび活性値の解析結果より,オリジナル細胞に比して,その発現と活性が高度に低下している細胞,中等度に低下している細胞,ほとんど低下が見られない細胞の3種類の胆嚢癌細胞株を選択した.それらの細胞株を用いて,細胞増殖能,皮下腫瘍形成能,血管新生能,肝転移能について比較検討を行った.siRNA処理を行った胆嚢癌細胞株3種類を用いた実験では,細胞増殖能,皮下腫瘍形成能,皮下腫瘍における血管密度(CD31染色)及び肝転移能は,すべて有意にGnT-V発現レベル及び活性値と相関する結果となった.胆嚢癌細胞株を使用した実験において,GnT-V発現及び活性値と増殖能,血管新生能,肝転移能は有意に相関することから考察すると,胆嚢癌細胞の悪性挙動とGnT-V発現の強い相関が証明された.胆嚢癌におけるGnT-Vの発現は,腫瘍生物学的悪性度を反映する因子であると考えられた.
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