2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子遺伝子学的診断に基づいた口腔癌に対する個別化免疫化学療法の開発
Project/Area Number |
22390386
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
浜川 裕之 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20127905)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中城 公一 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90314880)
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Keywords | 口腔癌 / 免疫療法 / 樹状細胞 / WT1 |
Research Abstract |
われわれは、特異的癌免疫療法を従来の治療法に加えることにより口腔癌治療成績の飛躍的向上を目指している。本研究では、口腔扁平上皮癌における癌抗原Wilms腫瘍遺伝子WT1の発現と放射線化学療法がその発現に及ぼす影響を検討した。当科にて初回治療を行った30症例の口腔扁平上皮癌組織を対象にWT1 mRNAの発現量を定量化リアルタイムRT-PCR法にて検討した。30例のうち18例(60%)においてWT1 mRNAの発現を認めた。また、4種類の口腔扁平上皮癌細胞株(B88,HSC2,HSC3,HSC4)について同様の手法によりWT1 mRNAの発現を調べたところ2株においてWT1 mRNAの発現を認めた。つづいて、各種抗癌剤処理について検討を行ったところ塩酸ゲムシタビン(GEM)処理群においては4株(100%)すべてにおいて、ドセタキセル処理群においては3株(75%)においてWT1 mRNAの発現上昇を認めた。また、初回治療において根治的放射線照射を行った口腔扁平上皮癌2症例の照射前後における腫瘍組織中のWT1 mRNAの発現を検討した結果、2症例ともにWT1 mRNAの発現上昇を認めた。これらの結果をもとにB88細胞においてさらなる検討をおこなったところ、免疫蛍光抗体法においてGEM処理によりWT1蛋白質の核内から細胞質への移行が認められた。WT1蛋白質は転写因子として核内に局在するが、GEM処理にて細胞質へ移行しプロテアソームによる抗原ペプチド産生が促進される可能性が示唆された。以上の結果より、口腔扁平上皮癌に対するWT1を標的とした特異的癌免疫療法と従来の放射線化学療法との併用の有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前より、当教室では口腔癌組織のtotal RNAおよび蛋白質を抽出し、保存しているため研究目的を達成できた。本研究により、口腔扁平上皮癌における癌抗原WT1の発現と放射線化学療法がその発現を増強することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
特異的癌免疫療法の効果を予測できるバイオマーカーの同定が極めて重要である。血清および末梢血単核球を検体として宿主の免疫状態を把握できるバイオマーカーの網羅的探索を行う。また、WT1特異的な細胞障害性T細胞の誘導を評価できる方法を確立する必要がある。これまでに報告されているテトラマーアッセイおよびエリスポットアッセイ法等により検討を行い、最適な評価法を決定する。
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