Research Abstract |
EU域内における都市の観光地化と,増加傾向をたどるアジア出身の外国人居住者(以下,アジア系外国人)との関係を明らかにするために,ウィーン,ブダペストなど中央ヨーロッパの都市を事例とした調査を行った。当該年度の成果をまとめると,以下の4点になる。 1.中央ヨーロッパの都市には伝統的な都市観光発達の経緯があり,都市の歴史や文化などが観光客にとって魅力であり続けている。観光客は増加の一途をたどっており,観光スポットや観光客の行動空間も増加・拡大の傾向にある。 2.一方,近年では,アジア系外国人が経営する商店やレストランなども観光の対象になりつつある。たとえばウィーンでは,これまで観光客にとって関心の対象ではなかった中国人居住地区での買い物や飲食が,彼らの興味の対象になり,中国人居住地区には観光地としての賑わいがみられるようになった。 3.本研究では,アジア系外国人として東アジア・東南アジア・南アジア出身者を対象とするが,ウィーンおよびブダペストでは中国人が最も多く,ついでインド,ベトナム,タイ出身者が多くを占めている。なかでも中国人は,飲食店,商店,卸売など商業,サービス業に従事している。 4.飲食店や商店では食文化や伝統文化などが提供されており,漢字など彼ら固有の言語と文字が店の内外に表示され,ファサードには伝統建築をあしらったデザインが施されるなど,固有のエスニック景観が生み出されている。都市内部におけるこうした独特の景観も,アジア系外国人が都市観光と結びつく重要な要因になるものと考えられる。
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