Research Abstract |
アンコール遺跡は,熱帯モンスーン気候下で,石材の劣化が進んでいる。この気候環境は,おおむね雨季(5~10月)と乾季(11~4月)に分けられるが,雨季には日周期性の降雨が局所的に発生している。また,砂岩・ラテライト・煉瓦を主体するアンコール遺跡の構成石材は,このような気候環境に伴って年周期および日周期の乾燥-湿潤の繰り返しを引き起こし,風化していると考えられる。しかし,カンボジア国内における気象観測地点は限定的で,地上気象観測データの共有はほとんどはかられていない。そこで本研究では,遺跡を構成する石材の風化にかかわる基本的な気象データを,独自に取得することを計画した。本年度は,APSARA(the Authority for the Protection and Management of Angkor and the Region of Siem Reap)による許可を得て,周壁で囲まれるアンコール・ワットの西部に気象観測ステーション(以下,AMOS)を設置した。そして,2010年12月22日から,気温,相対湿度,降水量,風向・風速,および日射量の6観測項目を10分間隔で測定している。AMOSにおける2010年12月23日~2011年3月7日までの短期間(乾季)の観測結果によると,日平均気温24.9℃,日最高気温35.6℃,日最低気温15.8℃であった。これらは,AMOSに近い観測点(Siem Reap Airport)の1997~2001年の気象統計と比較すると,最高気温は約1℃高く,最低気温は約4℃低い。一方,AMOSの日降水量は積算値で17mm(日最大降水量16.5mm,2011年3月7日)であるが,1~2月の統計値(2箇月積算降水量4.2mm)に比べて少ないことがわかった。
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