2011 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける国境管理と人の「移動圏」─マレー半島縦貫陸路国境を事例として
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22401014
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
石井 由香 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (20319487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒田 景子 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (20253916)
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Keywords | 社会学 / 東洋史 / 国境 / 道路網 / 移民 / 国際研究者交流 / マレーシア:シンガポール:タイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、発展途上国の国境管理に関する政策と政策の社会経済的影響について、マレー半島におけるシンガポール、マレーシア、タイの陸の国境管理を事例として考察・分析することである。本研究ではマレーシアを中心に、グローバル、リージョナル、ナショナル、ローカルといった重層的なアクターの営みを念頭に置きつつ、対象3か国の国境管理の論理、国境を越える道路網の開発・運用、人の移動ルートおよび「移動圏」の形成の実態とその背景要因の分析を通じて、上記の目的を達成することを目指している。 研究2年目である平成23年度においては、上記の目的に照らし、まず初年度から引き続き文献資料の収集および分析を実施した。現地の政策文書、統計資料、現地新聞記事に加えて、関連する著書、論文の収集を行い、重層的なアクターの動向を分類しながら分析を進めた。 また、現地調査については、本年度はマレー半島西側のマレーシア‐タイ国境(主にタイ側)、マレー半島東側のマレーシア‐タイ国境(マレーシア側)、シンガポール‐マレーシア国境を訪れ、ハジャイ(タイ)、ペナン、コタ・バル、ジョホール・バル(マレーシア)、シンガポール(シンガポール)を拠点都市として調査を行った。調査内容は、現地関連資料の入手および国境ポイントにおけるフィールドワーク、インタビュー、長距離バス・タクシー企業に関する資料収集、フィールドワークとインタビューである。また、マレーシアの首都クアラ・ルンプルにおいても、関連資料の収集を実施した。収集したデータ、資料の整理・分析も継続的に行った。これらの調査・分析により、特にナショナルおよびローカルなアクターの動向が把握された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度において、調査予定であったすべての国境3地域(マレーシア‐シンガポール国境、マレー半島西部、東部におけるマレーシア‐タイ国境)とマレーシアの首都クアラ・ルンプル、シンガポールの首都シンガポールにおける調査を実施することができ、必要となる文献資料、インタビュー、フィールドワークも着実に進めることができた。各地域、都市において入手したデータを元に、研究代表者、研究分担者とも各自分析を継続しており、この点に関しても順調であると言える。 研究分担者が体調不良により平成24年2月の現地調査(コタ・バル、クアラ・ルンプル、ジョホール・バル、シンガポール拠点)に参加できなくなったことで、一時順調な研究の遂行が懸念された。しかし、研究費の繰り越しが認められたため、同分担者により平成24年夏に上記4都市を拠点とする調査を実施し、2月調査で不十分であった点、研究分担者が担当するべき内容に関する資料、データを入手する予定である。 なお、研究分担者は、平成24年5月にマレーシアで開催された国際セミナーの招待講演において、英語による研究成果発表を行う。こうしたことも踏まえて、研究計画全体としては大きな支障なく、現時点で当初の研究目的を達成できていると言うことができよう。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度と本年度の2年間で、全体の研究計画において調査地として予定していたすべての地域で現地調査を実施することができた。このことにより、現地における相当量の資料およびデータ収集と、今後の収集可能性についての状況把握を完了した。この成果を踏まえて、最終年度においては、まだ収集が完了していない資料およびデータを入手するために、追加調査を計画し、実施する。 また、現地調査を通じて、分析の枠組みに関しても、移民研究、国境管理政策に関する既存研究のさらなる精査に加え、国際的に展開している境界研究(border studies)の研究動向を理解することがよりよい研究成果を得るために有意義であるということが理解されてきた。このため、最終年度においては、こうした分野における研究動向を把握するための文献収集および研究動向の把握にも力を注ぎたいと考えている。
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