2011 Fiscal Year Annual Research Report
ディアスポラにおける民族宗教の変質と再編-ヒンドゥー教と道教の動態的側面を中心に
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22401017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 大学院・国際文化研究科, 教授 (20230427)
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Keywords | ヒンドゥー教 / 道教 / 印僑 / 華僑 / ディアスポラ / 寺院 / 司祭 / 儀礼 |
Research Abstract |
実施計画中で、グローバル化の進むディアスポラ的環境におけるインド系宗教と中国系宗教の展開と新機軸について、比較宗教学的な方法を用いた海外調査を実施し、基礎的データの収集、問題点の整理、諸問題の考察を行うとしていた。この計画に沿って、調査研究の初年度であったH22年度の成果を踏まえ、さらなる展開と深化を図った。華人系とインド系の両民族集団が混在し、典型的なディアスポラを形作っている場所として、当初の予定通りシンガポール、マレーシアのペナン等を訪れ、宗教儀礼、信者集団、司祭の詳細な調査を行った。調査に当たっては、祭祀(ritual)や司祭職(priesthood)の本来的な形態について文献等を駆使して把握し、それによって得られた知見を現地での実践形態と比較対照するという方法を採用した。 ペナンについては、H22年度およびH23年度ともに、祭事の挙行が本務先の授業期間等とあいにく重なったために本格調査を実施できなかった。そこで年度末に、祭事は逸したが改めてペナン島のジョージタウン市を訪れ、ヒンドゥー教と道教の多数の寺院を実地調査し、特に前者について、司祭等と面接し聴き取りを行うなど、新知見と資料の収集に努めた。 一連の成果は、華人系宗教については、マレーシアとタイの事例を日本宗教学会の学術大会などで発表して公開・意見交換し、またインド系宗教については、シンガポールの寺院祭祀に取材した論文を学術誌『東方』に著し詳細な報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は東日本大震災直後の年度で研究体制の再構築に時間を要したこと、たまたま例年になく校務の多忙な年であったこと、インド人や華人の祭事が本務校での業務と日程的に重なることが多かったこと等により、当初予定の欧米のディアスポラでの現地調査が十分にできなかった。その代わり、東南アジア等に調査目的地を変更して本研究に関わる宗教調査を行い、その地域における調査データを蓄積することができたという意味で、(2)の「おおむね順調に進展している」に該当する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の経験を踏まえ、欧米での短期間の滞在でより効果的な調査を実施するため、事前に出来るかぎり調査先の関係者と接触し、無駄のない滞在となるよう留意したい。東南アジアのディアスポラ調査についても、事前に祭事カレンダー等と突き合わせて、集中的に調査できるよう最大限の注意を払うつもりである。
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