2013 Fiscal Year Annual Research Report
ディアスポラにおける民族宗教の変質と再編-ヒンドゥー教と道教の動態的側面を中心に
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22401017
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山下 博司 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20230427)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヒンドゥー教 / 道教 / 民族宗教 / ディアスポラ / 儀礼 / 寺院 / 移民 / 東南アジア |
Research Abstract |
本研究は、世界各地にディアスポラを形作るインド系と中国系の民族宗教の維持と変容の動態について、主としてヒンドゥー教と道教に取材しつつ調査研究するものである。移民先は旧来のディアスポラ(旧ディアスポラ)と比較的最近になって形成された新ディアスポラ(ネオディアスポラ)の二つに大別されるが、両者の相違と新傾向についてもじゅうぶんな考慮が払われる。 平成24年度に新ディアスポラでの調査に踏み込んだが、平成25年度においては、再度東南アジアの旧ディアスポラに焦点を絞り、マレーシア連邦(ジョホール州ジョホールバル市)やシンガポール共和国の状況などを集中的に調査した。前者においては、農暦(中国暦)9月に挙行される道教寺院・三善宮における九皇大帝の祭儀を数日にわたって参与観察し、かつ寺廟評議会の幹部委員と面会して情報を収集し、最新の知見を得た。後者(シンガポール)においては、セラングーン地区のヒンドゥー女神寺院(ヴィーラマーカーリヤンマン寺院)のニティヤプージャーの儀礼調査と国立図書館でのヒンドゥー寺院の修復工程の完了にともなう儀礼(クンバービシェーカ)に関わる寺院出版物(非売品)の複写などの資料収集をおこなった。 調査研究の結果は、学会発表(日本宗教学会)やシンポジウム(京都大学人文科学研究所)でのパネル報告などのかたちに反映させ得たとともに、複数の学術論文や著書(共同執筆)の形態でも公開することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
旧ディアスポラの状況については、これまで調査した具体例に即してかなりの程度究明を進めており、論文や著書のかたちで着々と公にしてきている。その意味では、当初の計画以上の達成度を認めることができる。 課題があるとすれば、欧米等の新ディアスポラに関わる諸事実の解明で、未だに2カ国(3都市)を調査し得たに過ぎず、一般化が難しい状況にある。それを克服して、全体像に行き着くことが本研究計画に残された課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、上記の課題を克服するため、新ディアスポラを含む数カ所について新たに調査を行い、アジアの伝統宗教を奉じる移民集団の宗教生活の民族アイデンティティの考察を深化したい。さらに、平成26年度は、これまで民族紛争の高まりで内戦状態にあったスリランカ北部一帯が、内戦終結後に外国人旅行者にも訪問可能な状態に復していると見られることから、ジャフナ等、北スリランカのタミル語地域を訪れて、ヒンドゥー寺院を中心に調査活動を希望している。いずれの調査も、校務との絡みでどれだけ纏まった日数の期間を確保できるかもポイントとならざるを得ない。 研究計画の終末を控え、研究の総括と成果公開も大きな課題となるであろう。
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Research Products
(8 results)