2010 Fiscal Year Annual Research Report
格差社会における平和構築のプロセスと課題:ペルー真実委員会と先住民
Project/Area Number |
22401043
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
細谷 広美 成蹊大学, 文学部, 教授 (80288688)
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Keywords | 平和構築 / 先住民 / 真実委員会 / ペルー / ラテンアメリカ / 人権 / 文化人類学 / 格差社会 |
Research Abstract |
研究への協力を依頼する海外の研究者との打ち合わせをするとともに、ペルー及びチリで調査研究を実施した 紛争後の平和構築の一環として、ペルーでは真実和解委員会の提言を受けて集団補償、個人補償、国内避難民への集団補償が計画された。集団補償はほぼ終了し、現在個人補償及び国内避難民への集団補償の基盤となる登録作業がおこなわれている。これについて、政府機関、NGO、被害者へのインタビュー調査を実施し、その実態を現場の視点から把握するとともに、様々な課題があることが明らかにすることができた。さらに、紛争後の秘密墓地の発掘状況、裁判等の進捗状況に関してもインタビュー調査を実施した。別途真実委員会が設置された隣国チリの研究者に、先住民マプチェと独裁政権後の民主化のプロセス及び人権との関係について調査を依頼した。チリでは、民主化以降も軍事独裁政権下で制定された法が、多国籍企業等による土地の収奪に対するマプチェの人々の運動に適用されている例がみられることが明らかになった。 ラテンアメリカ諸国は、相対的な政治的安定化を得た後、ネオリベラリズムの政策をとってきており、マクロレベルでの経済指標では、著しい経済成長を示している。しかし、ペルーの事例にもみられるように、この時期と平和構築のプロセスがほぼ並行したが故に、さらなる格差を招き、新たな政治的不安定化の要因を招きつつある。本研究を通じて、人種・民族、経済的に大きな格差をともなう社会において、紛争後の平和構築のプロセスが、国家単位の指標に還元できない、多くの課題を抱えていることを明らかしていく意義は大きい。
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Research Products
(5 results)