2011 Fiscal Year Annual Research Report
格差社会における紛争後の平和構築の実態と課題:ペルーの真実委員会と先住民
Project/Area Number |
22401043
|
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
細谷 広美 成蹊大学, 文学部, 教授 (80288688)
|
Keywords | 平和構築 / 真実委員会 / 先住民 / ペルー / 移行期正義 / 国内避難民 / 人権 / 開発 |
Research Abstract |
ペルーの平和構築のプロセスについて、真実和解委員会(真実委員会)と先住民の関係、真実和解委員会による報告書提出後のペルー社会と先住民の関係について調査研究し、人種・民族的不平等及び経済的格差がある社会における平和構築のプロセスの実態と課題を明らかにすることに取り組んだ。 紛争時に国内避難民となった人々が形成した地区で、以下に焦点をあてフィールドワークを実施した。調査研究の実施にあたってはペルー問題研究所の協力を得た。また昨年に引き続き、比較検討のため隣国チリの先住民マプチェと真実委員会及び平和構築のプロセスの関係について、チリ国立コンセプシオン大学の研究者に調査研究を依頼した。 (1)紛争時の経験、国内避難民となった経緯 (2)土地の取得、組織化、教育、インフラ整備のプロセス (3)真実和解委員会、政府機関、NGO等との関係 (4)補償(reparacion)との関係 国内避難民は紛争下の1980年代に先住民を中心に多数生じている。「国内避難民」という概念が国際社会で普及したのは80年代後半から90年代に入ってからであり、また被害者がペルー社会で周縁的地位にある先住民に集中していたため紛争当初国内の関心は低かった。このため、国内避難民は紛争下では「移民」として扱われ差別された。ペルーの国内避難民に関する先行研究は、主としてメンタル・ヘルスに焦点をあててきており、本研究は国内避難民の実態を歴史的に紛争後の平和構築との関係にいたるまで調査研究するはじめての試みという点で大きな意義がある。さらに、文化人類学が特異分野とする民族、人種的多様性を視野に入れて、平和構築のプロセスを長期視点から調査研究する本研究は、平和構築や移行期正義を実務及び理論的側面の双方から検討していくうえでの基礎研究として、国際社会への貢献が期待できる点で重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地の機関ペルー問題研究所による協力が、調査研究活動を推進するうえで重要な役割を果たしている。また、研究者のみならず政府関係者、NGO等からも様々な支援を受けることができたことが、研究目的達成に向けて非常に大きな力となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平和構築研究の課題として、これまで一旦紛争が終結した後も、再び紛争が繰り返されるということが往々にしてみられる。このため、近年平和構築と開発の関係の重要性が議論されている。ペルーの紛争地域の多くも、真実和解委員会による報告書が提出された直後から、再度紛争地域となっている。それ故、先住民を中心とする国内避難民地区の歩んできたプロセスを調査することを通じて、開発と平和構築の関係を長期的視野で考察していきたい。 平成24年度は所属大学の長期研修制度により、1年間海外で調査研究をおこなうことができるので、ペルー問題研究所及びハーバード大学ロースクールの人権プログラムに所属して調査研究活動をおこなう。
|
Research Products
(4 results)