2011 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の産業技術革新における日本人エンジニアの役割に関する研究
Project/Area Number |
22402025
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深川 博史 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (30199153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 英美 熊本大学, 法学部, 准教授 (80404078)
清水 一史 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (80271625)
久野 国夫 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (90136416)
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Keywords | 韓国 / 産業技術革新 / 日本人エンジニア |
Research Abstract |
本年度の課題は、従来とは異なるタイプの、在韓日本人エンジニアについて、インタビュー調査を実施することであった。過年度に調査した在韓日本人エンジニアは、電子・電気関係が多く、在韓エンジニアの役割について、一定の情報が得られたが、他の技術分野に関する情報は限定的であった。そこで本年は、精密化学分野及び橋梁技術分野の専門家を中心に、在韓日本人エンジニア情報を収集しインタビューを行った。具体的には、S精密化学、及び、S物産インフラ建設部門の日本人エンジニアである。 S精密化学のF氏は、合成ゴム及び重合トナープラント設計・建設、及び、重合トナー生産管理・品質管理の専門家である。S精密化学は、同企業グループのS電子向けにトナー生産を開始している。韓国企業は、5~6年前から、液晶フィルム(LCP)、BPパウダー、トナー、電池の素材となるポリシリコン、等の素材部門の内製化を進めており、インタビューによって、素材部門内製化への日本人エンジニアの役割が大きいことが確認された。 次に、橋梁技術分野については、超長大橋の設計を専門とする、S物産建設部門のT氏にインタビューを行った。T氏は、仁川空港のある永宗島から仁川市内を結ぶ仁川大橋の設計を主導した。日本は、本四連絡橋以後に超長大橋の建設がなく、海外からの受注に競争力を失っているが、韓国は、官民一丸となってインフラ輸出を進めている。T氏は、S物産の橋梁設計を担っており、海外インフラ輸出を進める韓国企業の、技術競争力向上に大きな役割を果たしている。より詳細なヒアリング記録は割愛するが、以上のような在韓エンジニアの役割に関する資料は着々と集まりつつある。次年度においては、さらに、従来とは異なる技術分野について、在韓エンジニアのインタビューを計画している。より多くの技術分野に関する資料を収集することで、研究成果を、客観的で説得力の有るものにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、電気・電子部門以外の、これまでにインタビュー経験のない、技術分野において、在韓日本人エンジニアのインタビューを計画していた。特に、限定して、新たな技術分野を探してはいなかったが、幸いにも、情報収集の過程で、精密化学分野に加えて、橋梁土木技術分野という、重要な技術分野について、インタビューの機会を得ることができた。いずれも、韓国企業の技術競争力を説明する上では、重要な技術分野であり、インタビューで得られた情報は極めて有用なものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでに調査した技術分野とは、異なる技術分野について、在韓日本人エンジニア情報を収集し、産業技術革新における役割について、インタビューを実施すること。それによって、研究成果を、客観的で説得力の有るものにしていくこと。(2)これまでに、インタビューを行った在韓日本人エンジニアについて、再度、コンタクトを取り、2回目のインタビューを実施することで、技術革新関与への状況を、より詳細に聞き取り調査すること。時間をおいて、再調査することで、最新の技術革新の動向を把握すること。(3)可能な範囲で、韓国企業側にとっての、日本人エンジニアの位置づけについて、韓国企業の雇用側の関係者より聞き取り調査を行うこと。それによって、非雇用側と雇用側の双方からの視点により、産業技術革新への役割が、より客観的に示されることが期待される。
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