2012 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の産業技術革新における日本人エンジニアの役割に関する研究
Project/Area Number |
22402025
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深川 博史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30199153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 一史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80271625)
吉岡 英美 熊本大学, 法学部, 教授 (80404078)
久野 国夫 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90136416)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 韓国 / 産業技術革新 / 日本人エンジニア |
Research Abstract |
本年度の課題は、従来とは異なるタイプの、在韓日本人エンジニアについて、調査を実施することであった。前年度の調査では在韓エンジニアの役割について有益な情報が得られたが、電子技術の分野に関する情報は限定的であった。そこで本年は、電子技術分野の専門家を中心に、在韓日本人エンジニア情報を収集しインタビューを行った。以下では、その中から移動通信技術のP社、電子制御技術のS社、の事例を紹介する。 移動通信技術のP社に勤務するK氏は、開発グループの常務として、開発製品を評価する立場にあり、厳しい日本市場への対応によって、P社が作り出す製品の品質を高めることが期待されている。このような期待を背負う技術開発のグループについて、最近は、チームワークが向上しているという。K氏の渡韓した1998年頃は、組織内の他者と情報を共有しないため、組織やチームに技術が根付かないという問題を抱えていたが、今は、チームでプレーし情報を共有して、組織で問題を解決するようになった。このような技術風土や環境変化の背景には外国人技術者の存在がある。 電子制御技術のS社に勤務するY氏は、日本企業に空調機器の技術者として勤務した。Y氏が手掛ける埋め込み型エアコンは世界的にみて日本の技術が優れていた。韓国ではY氏の転籍の頃から、韓国製の埋め込み型エアコンが普及し始めた。Y氏の顧問としての、部下への助言には、日本での経験が活かされている。例えば、日本は技術提案型で市場をつくりだすが、韓国は顧客の要望重視型で販売価格や生産コストを抑制する。日本では、市場を作り出すために、企業の枠を超えて製品開発に取り組む。電力会社と電機メーカーが共同で開発したエコキュートはその一例である。韓国では、最近になってようやく韓国電力と電機メーカーが共同で製品開発に取り組み始めている。このような取り組みにも、外国人エンジニアの存在が関係している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、精密化学分野と橋梁土木技術分野について、インタビューを実施し、かなりの情報を収集できたが、韓国企業が比較優位を持つ電気・電子技術の分野に関する情報は、限定的であった。そのため、本年度は、電気・電子技術の分野について、インタビュー調査を実施することとした。その計画の遂行過程においては、電気・電子分野の中でも、これまでにインタビュー経験のない、技術分野において、在韓日本人エンジニアのインタビューを行うことができた。いずれも、韓国企業の技術競争力を説明する上では、重要な技術分野であり、インタビューで得られた情報は極めて有用なものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに調査した技術分野とは、異なる技術分野について、在韓日本人エンジニア情報を収集し、産業技術革新における役割について、インタビューを実施すること。それによって、研究成果を、客観的で説得力の有るものにしていくこと。 これまでに、インタビューを行った在韓日本人エンジニアについて、再度、コンタクトを取り、2回目以降のインタビューを実施することで、技術革新関与への状況を、より詳細に聞き取り調査すること。時間をおいて、再調査することで、最新の技術革新の動向を把握すること。 可能な範囲で、韓国企業側にとっての、日本人エンジニアの位置づけについて、韓国企業の雇用側の関係者より聞き取り調査を行うこと。それによって、非雇用側と雇用側の双方からの視点により、産業技術革新への役割が、より客観的に示されることが期待される。
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