2013 Fiscal Year Annual Research Report
韓国の産業技術革新における日本人エンジニアの役割に関する研究
Project/Area Number |
22402025
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
深川 博史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30199153)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 一史 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80271625)
吉岡 英美 熊本大学, 法学部, 教授 (80404078)
久野 国夫 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (90136416)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本人エンジニア / 技術開発 / フロントランナー / 韓国 |
Research Abstract |
本年度の課題は、従来とは異なるタイプの日本人エンジニアについて調査することであった。従来の調査では、ディスプレイ分野の情報は限定的であったため、本年はディスプレイ分野の日本人エンジニアにインタビューを行った。以下ではそのうち2件を紹介する。 A氏は、在職中にプラズマディスプレイのディバイス開発に携わった。A氏によれば、韓国のエンジニアの多くは、現場からマネージャーへ早期昇進を考えており、現場を好む日本とは考え方が異なる。地道なトライ&エラーの作業をやっている時間的猶予がなく、早く成果を出してキャリアアップしたいというモチベーションが強い。今後の韓国の技術開発については、欧米や日本など、目指すべき目標がある時代は良かったが、フロントランナーに立つことで、これからは何かスペックに追加する必要が生じてきている。ただ、スペックをつけすぎると売れ行きが伸び悩み、日本企業の二の舞になる可能性もある。 一方、B氏は、A氏と同じTグループ内の他の研究所に勤務している。B氏によれば、LCD部門には50人以上の日本人がいるが、半導体部門には200人いるようだ。LCDと半導体で人事の考え方が異なり、LCDはウェットで比較的長期雇用もあるようだが、半導体はドライで、人の入れ替わりが激しい。年配の顧問の採用は今も続いているが、相対的に割合は低下している。顧問という職種は、日本企業を退職してから来る人に与えられることが多いが、Tグループに来る日本人は低年齢化してきている。30代独身や幼い子供をもつ人が入社してくることがある。2010年頃に、日本人が大量に採用された。採用された日本人エンジニアは、同じ部署に置かれることは少なく、あちこちの部署に配置される。各職場に日本人技術者を一人ずつ置くことで、各技術開発パートのパフォーマンス向上を狙っているようだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、移動通信技術と電子制御技術の分野について、インタビューを実施し、かなりの情報を収集できたが、韓国企業が比較優位を持つディスプレイ技術の分野に関する情報は、限定的であった。そのため、本年度は、プラズマディスプレイ、及び、液晶ディスプレイ技術分野を中心に、インタビュー調査を実施することとした。そして、当初の計画通り、プラズマディスプレイ、及び液晶ディスプレイ技術分野の日本人エンジニアへのインタビューが実現した。プラズマディスプレイは、LCDに押されて、売り上げが伸び悩み、研究投資が縮小しているとのことであったが、日本人エンジニアとしての勤務経験より、フロントランナー型への転換など、貴重なインタビュー成果が得られた。韓国の技術開発が、日米へのキャッチアップでではなく、フロントランナーに転換しつつあるという説明は注目すべきものであった。また、LCD技術者へのインタビューからは、来韓する日本人エンジニアの低年齢化という傾向について、説明を聞く機会を得た。韓国の技術開発のフロントランナーへの転換示唆や、日本人エンジニアの低年齢化は、今後の韓国企業の技術開発戦略の転換を示唆するものである。いずれも、韓国企業の技術競争力を説明する上では、重要な証言であり、インタビューで得られた情報は極めて有用なものであったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに調査した技術分野とは、異なる技術分野について、在韓日本人エンジニア情報を収集し、産業技術革新における役割について、インタビューを実施すること。それによって、研究成果を、客観的で説得力の有るものにしていくこと。 これまでに、インタビューを行った在韓日本人エンジニアについて、再度、コンタクトを取り、2回目以降のインタビューを実施することで、技術革新関与への状況を、より詳細に聞き取り調査すること。時間をおいて、再調査することで、最新の技術革新の動向を把握すること。 従来の調査より、韓国の技術開発のフロントランナー型への転換模索や、来韓日本人エンジニアの低年齢化という証言が得られている。本年度の新たなインタビューでは、このような新潮流について、根拠となるインタビュー資料の収集を検討したいと考えている。
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