2011 Fiscal Year Annual Research Report
シミュレーションを通した共生観の構築に関する社会心理学的実証研究
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22402048
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
松本 陽子 南山大学, 総合政策学部, 講師 (40274732)
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Keywords | シミュレーション / ゲーミング / PAC分析 / 描画分析 / 平和 / 対話 / 紛争 / 構造的暴力 |
Research Abstract |
2011年8-9月にイスラエル(テルアビブ大学、アルクッズ大学)を訪問し、シミュレーション・ゲーミングの実施前の打合と事前調査を行った。国際シミュレーション・ゲーミング学会の参加発表者が在職していたベツレヘム大学でスタッフを紹介され、平和構築や対話のためのシミュレーション・ゲーミングの使用、という概念についてより深く知ってもらうために、2011年10月に札幌で行われたJASAG(日本シミュレーション・ゲーミング学会)に短期招聘参加してもらい、その前後に行われたAPPRA(アジア平和会議)等を経て、2011年11月にまずパレスチナ側でシミュレーション・ゲーミングを実施し、引き続いて2-3月にイスラエル側でもシミュレーション・ゲーミングを実施した。 現在までには未だシミュレーション・ゲーミングを通した比較分析をするためのデータ収集を終えていないが、PAC分析および描画分析の収集結果の比較からは、紛争にかかわる両者の間において、「平和」という概念の内部構成には、かなり顕著な差異が認められた。差異の背景には、文化的背景や民族的影響もあり比較は単純ではないが、占領に由来する立場の違い、とくに社会の抑圧状態の差異も大きいと思われる。具体的には、イスラエル側が安寧や静けさという個人的状態を「平和」に想起し、パレスチナ側は承認や自由といったより集合的制度的状態を想起した。しかし2011年7-8月にテルアビブを中心に社会的正義デモが行われ、またパレスチナの各地域でも非暴力の社会的主張が行われていることから考えると、両者の間に社会全体の変革や協力・調整を非暴力かつ民主的に行うことへの希求はある。ヨハン・ガルトゥングの「構造的暴力」概念を基盤にしながら、あからさまな暴力だけではない様々な要素がどのように対話や平和樹立の障壁となっているか、と同時にそれがどのように超越されうるのかを、とりわけ個々人の内部観測を通して比較しなければならない。シミュレーション・ゲーミングの外部観測よりも、内的態度分析であるPAC分析等により一層注目することが重要で、次年度は成果を早急にまとめたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自己都合で4月上旬から7月上旬に休職し、さらに年度末2-3月の海外研究出張中には家族が危篤(その後死亡)となったので、研究作業の途中で帰国することになった。これらのために計画が徐々に後ろにずれており、予定していた紛争地(イスラエル、パレスチナ)でのシミュレーション・ゲーミングの実験比較については、中途遂行の状態で年度終了となったので、次年度の早々に再び行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に途中で終了した紛争地の比較調査部分を平成24年度の夏季には渡航して終了し、非紛争地の調査はイタリアではなく日本国内で代替することによって、平成24年度内に予定していたすべての比較項目を終えたい。滞在期間がなかなか集中的にとれないことが最大の問題点である。平成23年度に収集したアラビア語の回答シートを分析するために通訳補助の作業が必要だが、渡航期間が限られており現地作業量に限界があることや、日本国内で通訳者の時間都合がつきにくいことから、アラビア語圏の大学からのインターンシップを研究室に受入し、日本国内で集中的に作業予定である。また分析と同時にできるだけ早く、成果を積極的に発信公刊していきたい。
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