2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22403016
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海保 邦夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00143082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大庭 雅寛 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (40436077)
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Keywords | 原生代 / 全球凍結 / エディアカラ生物群 / 地球環境変動 / 溶存酸素 |
Research Abstract |
この2年間で、浅海溶存酸素濃度の増加が多細胞生物の台頭と同時に起きたこととキャップカーボネイトの生成プロセスを、オーストラリアのキンバレー地域の地質調査とバイオマーカー(分子化石)分析で明らかにした(これらは学会発表した)。 原生代初期約20億年前に真核生物が現われ,エディアカラ紀からカンブリア紀にかけての約6億年前から約5億年前に,多細胞生物の爆発的進化が起きたことが知られている.この多細胞生物の爆発的進化の原因解明のために,オーストラリアの浅海堆積岩試料中の溶存酸素指標のプリスタン/ファイタン比分析を行った結果,5億8000万年前のガスキアス氷期後溶存酸素量の増加が起きたことがわかった.この溶存酸素量の増加は,それぞれ,海綿動物と刺胞動物などの原始的海洋動物の化石の産出期と,全ての生物門が出そろう前期カンブリア紀のチェンジャン動物群と,同層準同年代であるので,溶存酸素量の増加が海洋動物の大進化を起こしたプロセスかもしれない. 全地球が凍結したと言われるマリノアン氷期の漂礫岩堆積物の直上のキャップ炭酸塩岩の分子化石は、浅海における無酸素還元環境発達(プリスタン/ファイタン比、アリルイソプレノイド、ジベンゾチオフェン)と生物生産量増加(プリスタンとファイタンの和)を示した。このことは、光合成生物のブルーミングにより有機物が硫酸還元バクテリアに与えられ、硫酸還元バクテリアの介在によりキャップ炭酸塩が生成したことを示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた2つの目的に関して、国際誌へ投稿するに充分な成果を得た。国内学会発表を本年1月に行った。国際学会発表は本年8月に行うことになっており、国際誌への論文投稿を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの問題点がある。ひとつは、これらの結果は一地域で明らかにしたことであり、他地域でどうなのかを調べる必要があることである。そのため、本年度は、キンバレー地域の南のオーストラリア中央部で、地質調査と試料採取を行い、より広い地理的範囲でのこれらの現象を明らかにする。もう一つの問題は、今回得られた浅海溶存酸素濃度の、地球史における位置づけが不明なため、浅海溶存酸素濃度の増加が多細胞生物の台頭の原因と言切れないことである。そのため、オーストラリア西部の大古代~原生代初期の地層から試料採取を行い、バイオマーカー分析を行うことで、これらの時代と後期原生代における溶存酸素濃度のバイオマーカー指標を比較検討して、地球史における浅海溶存酸素濃度の変化の概要をつかむことにより、この問題を解決して、最終的結論を得る。
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Research Products
(4 results)