2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドネシアの金採掘が盛んな地域における水銀汚染の実態調査
Project/Area Number |
22404013
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
井上 隆信 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00184755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永淵 修 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (30383483)
川上 智規 富山県立大学, 工学部, 教授 (10249146)
横田 久里子 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 助教 (60383486)
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Keywords | 水銀 / インドネシア / 水質汚染 / 大気汚染 |
Research Abstract |
24年度は、インドネシアの金採掘が盛んな、中央スラウェシ州パル市ならびにパプア州ティミカにおいて、調査を実施した。 パル市では、河川、湾の水中水銀濃度と、パッシブサンプラーを用いた大気中のガス状水銀濃度を測定した。パル市では、金鉱石に直接水銀を添加し、金アマルガムを製造、その後バーナーで水銀を揮発させるという金精錬法を用いているが、その精錬所が730か所にもおよぶため、水銀の使用量が非常に多く年間180トンと推定される。河川水の濃度は、205~320ng/Lと高いものの、日本の環境基準の500ng/Lよりは低かった。湾の濃度は河川水より低く6.0~82.8ng/Lであったが、魚等生態系への根濃縮が懸念される。大気中の水銀濃度は精錬所の集積するPoboya地区で最大47000ng/m^3、多くの住民が生活しているパル市街地でも1000ng/m^3を超えることがあった。 ティミカではアメリカの精錬会社(Freeport-McMoRan Copper & Gold Inc.)がGrasberg鉱山から運搬してきた金鉱石の比重選別を行っており、選別後の排水が流下する河川敷において住民らが選別た漏れた砂金の採取をしている。砂金はティミカ市街のgold shopと呼ばれる精錬所に持ち込み、水銀を加えてアマルガムを製造しているが、砂金の状態にまで選別されているので、水銀の使用量は多くない。砂金を採掘している河川敷も精錬会社の私有地となっており、交渉はしたものの河川水の採取は許可が下りずにできなかった。一方、大気中の濃度は、市街地平均で7ng/m^3、最大で21ng/m^3と、バックグラウンドレベル(2ng/m^3)よりは高かったがパル市と比較するとはるかに低いレベルであった。これはパル市における水銀の使用量が非常に多いことが原因と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度のアチェ州、ブンクル州、西カリマンタン州、北スラウェジ州、中央スラウェシ州に加えて、パプア州においても調査を実施することができ、今まで報告がなされていない州でかつ金精錬が盛んな州での調査は、ほぼ全て1回は実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
中央スラウェシ州のパル市が、最も汚染の進んだ地域であり、来年度も集中的に実施する。その他、現地での情報や要請に基づいて、汚染地域の調査も実施する。また、今年度、調査の許可が下りなかったパプア州については、政情が不安定でデモも頻発しているが、現地の状況を勘案しつつ、中央政府からの許可を得て、再度の調査を試みる。
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