Research Abstract |
バングラデシュの堆積構造は,表層は南に向かって緩く傾斜し,深層は急勾配で傾斜する.したがって,南北方向3点の試料採取地点を設けて調査している.今年度は,昨年の南西部に引き続き,中西部で試掘,調査解析した. XRF,XRD,SEM,TEMなどの機器を多用し,各採取点で鉛直方向に粒度分布,化学成分分析を行った結果,土壌(堆積物)ではヒ素(As)とFe,Mn,Alは有意な正の相関がみられ,地下水の測定では,Na,Al,Si,Fe,PとAsは有意な正の相関があった. ヒ素の濃度は5m以浅にあるbrown clayがblack clayやvery fine sandより高いことが判明し,FeやAlの存在はbrown clayからのヒ素溶出を助長していた.帯水層におけるAsの含有量は主に土壌の粒径,表面積,FeやAlを含むミネラルに左右され,水酸化鉄と水酸化アルミニウムを多く含む微細粒子は,一般的な粒子より吸着能が高いことが知られた.一方,理論解析を加味したゼオライトでの溶出実験では,水酸化鉄と二酸化マンガンは溶出を増加させたが,これらを同時に添加した際には溶出量が減少していた.これらの結果は,FeやAlの酸化水酸化物(オキシ水酸化物)の鉱物からの地下水へのAsの溶出メカニズムの解明の一助になる. また,現地土壌を適用したヒ素の溶出・吸着実験で,深い帯水層の安全な水探索を評価するAs輸送モデルを構築するための溶出平衡に関するK_d(分配係数)やK_r(化学反応速度係数)を求め得た. さらに,微生物の作用で分解された有機炭素もヒ素溶出に関与することが知られ,南北3地点の比較とともに次年度の課題になった. なお,ヒ素を多く含有する地層の形成年代測定は,高感度加速器質量分析システムを適用して分析中であったが,東日本大震災に見舞われ,分析計の補修の後再開の予定になっている。
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