2011 Fiscal Year Annual Research Report
海外に自生する発熱植物の体温時系列データの収集と決定論的非線形予測
Project/Area Number |
22405001
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
|
Keywords | 生体生命情報学 / 植物 / アルゴリズム |
Research Abstract |
一般に植物は積極的な発熱能力はなく、その体温は気温とともに変動すると考えられている。しかしながら、驚くべきことに、植物の中には能動的な発熱によりその体温を外気温より10℃~20℃以上も高く保つことができる"発熱植物"が存在する。本研究においては、Arum maculatum等の海外に自生する発熱植物を対象に、フィールドにおける体温変動に関わる時系列データを収集する。さらに、得られた時系列データについては、決定論的非線形予測等の一連の解析を行い、それぞれの発熱植物が有する温度制御に関わるダイナミクスを明らかにする。本研究は、発熱植物における温度制御アルゴリズムの普遍性(あるいは多様性)の解明、および、生命現象におけるカオスのメカニズム解明の礎になるものである。 今年度は、昨年に引き続き、英国に自生するArum maculatum及び、オーストラリアに自生するPhilodendronおよびDragon lilyの自生地に赴き、当該植物の発熱現象を測定するとともに、熱産生に重要なミトコンドリアの活性制御に関するメカニズムの解析を行った。特に、Arum maculatumについては、一過的な発熱現象が誘起されるメカニズムに関する新たな知見が得られ、当該成果をPlant Physiology誌で発表した。本年度までの調査の結果では、ザゼンソウ以外に精密な温度調節ができる発熱植物は未だ見出されておらず、ザゼンソウにおけるカオス性に基づいた温度制御は植物界においてユニークなものである可能性が高い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外に自生する発熱植物め温度データが確実に収集できている。さらに、熱産生メカニズムに関する新たな知見も得られ、原著論文として報告ができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Arum maculatumの発熱現象については、温度により蛋白質分解酵素活性が制御されている可能性が出てきており、今後さらに研究を継続する。また、Dragon lily等の発熱植物については、その呼吸制御に関わる代謝産物の同定等を行い、発熱調節メカニズムの解明に挑む。
|
Research Products
(4 results)