2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミャンマーとタイ北部における家畜寄生虫症の分子疫学と抗寄生虫薬用植物の探索
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22405037
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片倉 賢 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (10130155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
櫻井 達也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60547777)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ミャンマー / 寄生虫 / 薬用植物 / バベシア症 / タイレリア症 / 衛生昆虫 / 疫学 / バングラデシュ |
Research Abstract |
平成24年度の繰越分として平成24年5月にバングラデシュのMymensingh地域においてイヌバベシアの調査を行った。野犬50頭から末梢血をFTA eluteカードに採取し、抽出したDNAについてバベシア原虫の18S rRNA遺伝子のnested PCR検出を行ったところ、陽性率は30%であった。これらのPCR産物をRFLP 解析と塩基配列解析を行った結果、原虫種はすべでBabesia gibsoniであることが判明した。さらに、BgTRAP遺伝子を増幅してPCR産物の塩基配列を解析したところ、C末端近くにあるアミノ酸残基の繰り返し領域に多型が認められた。BgTRAP遺伝子の塩基配列の系統樹解析により、バングラデシュのB. gibsoni株は他の東アジア株とは異なるクラスターを形成することが判明した。イヌのBabesia gibsoniは、アジアではこれまで日本、韓国、台湾、マレーシアに分布することが知られているが、本研究により、バングラデシュのイヌにB. gibsoniが感染していることが初めて明らかになった。 一方、住血微生物のベクターとして重要なアブの調査では、タイ国チェンマイ付近においてはTabanus属 が3種類(T. eurytopus, T. rubidus, T. striatus)、Chrysops 属が2種類(Chrysops disper, C. fasciatus)が分布することが確認された。また、ミャンマーにおけるこれまでの調査では、Tabanus 属が4種類(Tabanus brunnipenis, T. fontinalis, T. rubidus, T. striatus)、Chrysops 属が2種類(Chrysops disper, C. fasciatus)が分布することそれぞれ確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はミャンマーにおける初めての広域的調査であり、ミャンマー国内にピロプラズマ(バベシア、タイレリア)が広く蔓延していることを明らかなった。また、肝蛭についてはFasciola giganticaとFasciola sp.の2種が存在することを明らかにし、Fasciola sp.は中国から侵入した可能性が考えられた。衛生昆虫の形態学的同定では、アブについてはミャンマーにTabanus が4種類、Chrysops が2種類分布することを確認し、タイ国チェンマイ付近には、Tabanus が3種類、Chrysops が2種類分布することを確認した。一方、バングラデシュでは野犬の血液材料からイヌバベシア原虫のPCR検出を実施した。陽性率は30%であり、遺伝子解析の結果、原虫種はすべでBabesia gibsoniであること、また、B. gibsoni株が既知の東アジア株とは異なるクラスターを形成することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
ミャンマー中央東部地域において、牛のタイレリアとバベシア原虫のPCR検査を行う。また、山羊のトキソプラズマ感染について抗体検査を実施する。ミャンマーの野生小型哺乳類について調査する。肝蛭については、バングラデシュで採取した肝蛭の遺伝子解析を行う。薬用植物については抗トリパノソーマ活性物質の分離・精製・性状解析を継続する。
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