2010 Fiscal Year Annual Research Report
アフロユーラシアにおける初期農耕・牧畜文化の比較研究
Project/Area Number |
22405043
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
佐藤 洋一郎 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (20145113)
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Keywords | 農耕 / 牧畜文化 / 遊牧 |
Research Abstract |
本年度は初期農耕・遊牧・牧畜文化をキーワードに、個別分野におけるそれぞれの研究成果を統合し、各人のフィールド枠を超えて相互訪問し異分野との交流を促すことで、農耕という生業に通底する原理を考察するという目的に基づき2つの調査を実施した。その1つは「中央アジアにおける遊牧民と農耕民の軋轢と交易」というテーマで、遊牧世界における「中原」ともいうべき中央部の森林ステップ地帯において、城址ならびに墳墓等の遺跡の分布から遊牧世界における農耕を空間的に位置づけながら、遊牧民と農耕の関係について歴史的に再考した。現地の遊牧民との生活、文化交流を通しての結果、遊牧世界にとって農耕民および農耕地は庇護すべき従属的な一部分ではあるが、社会全体空間全体での定着化が進行すると主従関係は容易に転換しうることを改めて明らかとなった。もう1つは「西アジアにおける遊牧民の発生と移動」というテーマで、ヨルダン渓谷からジャフル盆地一帯の住居祉の状況と周辺の環境から、農耕、牧畜と人々の生活について歴史的に再考した。その結果西アジアにおける農耕・家畜文化は、「家畜の習性」の成立と「家畜の形質」の成立、岩の狭間への閉じ込めや囲いの使用の必要な状況から遊牧の可能性への展開などを考えなくてはならず、自分たちのコントロールする群があったからこそ一定程度定住的に生活できるようになったのではないかと推測する。いずれにせよドメスティケイションの起源問題は、直接的な発掘や実証から遠くに立っている人類学者だけでなく他分野においても、まだまだ思考パズルとして十分に興味深いものと考えられる。いずれにせよ、中央アジアの遊牧文化は西アジアの「農牧複合」とはまったく異なっており、今後さらに両者を比較することにより初期農耕文化における地域性について新たな見解が得られよう。
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Research Products
(3 results)