2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22406007
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石野 智子 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (40402680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新澤 直明 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (10583015)
橘 真由美 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (00301325)
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Keywords | 三日熱マラリア原虫 / 肝臓ステージ / 休眠体 / 顧みられない熱帯病 / 再発 / 寄生胞 / タイ王国 |
Research Abstract |
三日熱マラリア対策の大きな課題は、原虫が肝細胞内で時には数年にも及び「休眠」するために、一旦治癒した後に再発することである。本課題は、三日熱マラリア原虫の肝細胞内での培養法の確立および、肝内型原虫と休眠体との識別法を開発することを目的とし、本年度は以下の研究を実施した。 1.感染流行地(カンチャナブリ)における実験システムの構築。タイ王国における海外共同研究者、Jetsumon Sattabongkot博士の所属がマヒドン大学に変更となったのに伴い、ミャンマーとの国境に近くのカンチャナブリに於いて新たなフィールドサイトを立ち上げた。カンチャナブリのマラリア診療所、実験室を訪問・視察し、実際に患者血液を蚊に吸血させる実験を行った。 2.三日熱マラリア患者から得られた血液を吸血させた蚊の唾液腺からスポロゾイトを得て、ヒト肝癌由来培養細胞HepG2と、海外共同研究者の樹立した肝細胞HC-04に添加後、培養を行った。原虫細胞質に発現するHSP70の抗体を用いて蛍光抗体法を行ったところ、肝内型原虫が検出できた。同時に行った熱帯熱マラリア原虫では、HCマ04細胞株を用いると原虫発育が後期まで進行したが、三日熱マラリア原虫では大きな違いが認められなかった。材料調達が困難なため、再現性を得ることが次の課題である。 3.材料調達が比較的容易なネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)を用いて、肝臓ステージ原虫の培養系の最適化を行った。最初に、分化マーカーの検討をおこなったところ、LISP2は発育が進行するに伴い、局在が原虫細胞質から、肝細胞質へと移行することを見出した。次に、培地を数種類比較検討した結果、RPMI1640+10%FCSを用いた時に、1)肝内型原虫の大きさ、2)分化マーカー抗体(LISP2)を用いた時の分化段階、の2つの指標で最も発育がよいことが判明した。また、培地中のどの因子が発育に関与するのか現在解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外共同研究者の移籍により、新たなフィールドサイトの立ち上げ、および研究に必須な媒介蚊の確保という問題が生じたが、本年度中に概ね解決し、以前と同等以上に使いやすい設備の立ち上げに至った。また、本年度のタイの大洪水に関しては、共同研究先、診療所とも被害に遭うことはなく、研究を続けられる状態である。その間、スポロゾイトの回収実験は-度しか行えなかったが、初めて蛍光抗体法で原虫を検出することができた。また、準備が整うまでの間に、ネズミマラリア原虫をモデルどして用いて、より良い培養条件の検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新しいフィールドサイトの準備が整った次年度は、回収できる三日熱マラリア原虫スポロゾイトの数の増加が見込まれるため、三日熱マラリア原虫を用いた肝臓ステージ培養系の最適化に取り組む。具体的には、スポロゾイトをHepG2,HC-04細胞に添加し、HSP70抗体に加えて、寄生胞膜に局在するタンパク質、UIS4,EXP1,LISP1抗体を用いて蛍光抗体法を行い、原虫を確実に検出できる方法を確立する。また、本年度にネズミマラリア原虫を用いて明らかにしたLISP2が三日熱マラリア原虫でも肝臓ステージの分化マーカーとして用いられるか検討する。その後、培養細胞、培地を比較検討することで、最適な培養条件を決定する予定である。
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Research Products
(2 results)