2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22406018
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
矢野 栄二 帝京大学, 医学部, 教授 (50114690)
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Keywords | 石綿 / クリソタイル / 中国 / 肺がん / 疫学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1.「白石綿は青石綿ほど発がん性がない」というAmphibole Hypothesisの当否を、肺がんと胸膜中皮腫にわけ、喫煙の影響も考慮して検証する。2.同じ生産地の石綿に曝露しても、石綿鉱山より石綿製品工場の方が肺がんの発生率が高いといわれるTextile Mysteryの当否を確認するとともに、業務や工程による石綿繊維の種別とサイズ分布および混在粉じんの差からこのMysteryの原因を解明する、の2点である。 第1点については、重慶石綿工場1139名中に観察された41名の男性肺がん患者について、年齢(+5歳)でマッチさせた5人ずつの対照群を置き、コホート内症例対照研究を行った。喫煙、年齢、曝露開始年齢、曝露期間で調整した条件付きロジスティック分析の結果、症例の54%は石綿高曝露群であるのに対して、対照では24%に過ぎなかった。喫煙も症例群で多かった(90%対73%)。石綿高曝露による肺がんのオッズ比は3.66(95%信頼区間1.61-8.29)で、喫煙によるそれは3.33(1.10-10.08)であったが、喫煙する高曝露者は10.39(1.34-82.45)であった。すなわち石綿高曝露は明らかに肺がんの危険を増すが,同時に喫煙と石綿による肺がんの発生には相乗的な効果があると考えられた。以上の結果はOEM誌に発表した。 第2の目的に関連して、工場内で吸引収集した52サンプルについて、分散染色分析法で石綿種別を概略評価したところ、繊維形状の粉じん中にクリソタイルは多いが、トレモライトの比率は極めて低かった。さらに石綿種別を確定するためエネルギー分散型X線解析装置付き走査電子顕微鏡で解析の準備を開始したが、地震と計画停電の影響で遅れている。研究計画2年次にこの分析を早急に再開し、作業環境の繊維濃度とともに論文にまとめる計画である。さらに四川省石綿鉱山作業者についての長期追跡結果が入手できたので、その解析と論文化を2年次以降に進めるとともに、鉱山の作業環境試料についても引き続き入手のための手配を続ける予定である。
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Research Products
(2 results)