2010 Fiscal Year Annual Research Report
バングラデシュにおける地下水砒素汚染と児童生徒の知的機能・社会生活能力
Project/Area Number |
22406022
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
稲岡 司 佐賀大学, 農学部, 教授 (60176386)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 知保 東京大学, 医学系研究科, 教授 (70220902)
永野 恵 熊本保健科学大学, 保健科学部, 教授 (10136723)
田中 美加 福岡大学, 医学部, 講師 (70412765)
牛島 佳代 福岡大学, 医学部, 講師 (10336191)
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Keywords | バングラデシュ / 地下水 / 砒素汚染 / 児童生徒 / 知的機能(IQ) / 社会生活能力 |
Research Abstract |
1990年代初めに地下水砒素汚染が確認されてから20年近くたった今も、バングラデシュでは4千万人以上の人々が健康に「危険」といわれる50ppb以上の砒素濃度に汚染された地下水を日常的に飲んでいる。この地下水砒素汚染の健康影響については様々な疫学調査が報告されているが、精神的・社会的な側面に関してはほとんど報告がなく、その結果も一致してしない。本研究では砒素汚染の程度が最も高いナラヤンガンジ郡(バングラデシュの首都ダッカの南東約30km)地区の中学生(12~18歳)約250人を対象として、地下水砒素汚染が彼らの知能指数(IQ)と社会生活能力(Social Competence, SC)等に及ぼす影響について検討した。対象者の中から10年以上の砒素暴露年数と一定の修学年数を保証するために、14~15歳の中学生で9年生か10年生である130人を選び、砒素の暴露指標である尿中砒素濃度を3段階(文献値から137ppb未満、137-400ppb、400ppb以上)に分けた後、これらとIQおよびSCの関連性を検討した。その結果、尿中砒素濃度の水準が上がると、IQおよびSCは5%水準で有意に低下し、これらの関連は社会経済状態などの他の変数をコントロールしても有意だったため、砒素暴露が中学生のIQとSCを低下させていると結論された。この結果は社会的にも大変重大な影響をもたらす可能性があるため、もっと対象者を増やしながら低年齢層や高年齢層でも検討する一方、砒素以外の重金属や化学物質との混合汚染の可能性や、これに対応する手段を様々なレベルで早急に検討する必要がある。 本調査ではこのほかに、中学生の母親の色覚異常やQOL、「飲料水」に対する意識調査も実施したが、それぞれの分担者が現在分析中である。来年度にはこれらをデータベース化し、相互の関連性についても検討する予定である。
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