Research Abstract |
研究の目的 メタボリック症候群(metabolic syndorome,MS)は食生活と生活様式の都市化に起因する文明病とも位置づけられている。然るに、アジア諸国外でみ再貧困地域を抱えるバングラデシュ国の農村部の女性におけるMSの増加がm我々の先行研究にて明らかにされた。そこで同地域の女性を対象とする人口統計調査、身体計測、血液上検査、室病等の健康/疫学調査、食生活や家族/生活/労働状態等の社会経済学的調査、更にMSや新欠陥室病に関連する事が懸念されるアジア地域での糖尿病や心血管疾患への予防対策への有効活用や、日本人データとの比較検討により、将来の前向きコホート研究や、人種/地域性/個別性を考慮した生活様式、食習慣、薬物等における介入研究へと発展させる基盤を形成する。 本年度(~平成25年3月31日)の研究実施計画 研究3年目である本年度は、当研究当初の研究計画書(Form S-1-9)計画に伴い、バングラデシュ国における調査情報資料と検体収集、日本への検体輸送、日本での測定解析作業を継続する。当初からの計画通りにグラミン健康財団との協働調査体制は継続しつつ、そのグラミン健康財団と医療研究領域において協力実績を有するHealth and Disease Research Center for Rural Peoples,Bangladesh(HDRCRP)【参照:web site HomePage:HD)RCRP】(多国籍研究者を有する国際的研究施設)との協働にて継続、発展させる。Grameen健康財団や国立国際医療研究センターからの指導を得ながら、特に日本への輸送に伴う損傷、変性等が初年度研究において認められ、採血等の兼題収集後、可及的速やかな検体の測定、解析を要する事が判明した検体および測定項目は、バングラデシュ国内のHDRCRP研究施設にて測定解析を行う。バングラデシュ国Grameen財団倫理委員会審査の承諾を得ており、その承認内容に従う。 検査/調査項目 (1)生物マーカーの測定:炎症系とアデイポサイトカイン等:高感度CPR、インシュリン抵抗性指標(HOMA-IR)、ホモシステイン、シスタチンC、AST,ALT,尿酸、IL-6,TNF-alpha,PAI-1,その他。(2)微小循環障害と臓器障害:網膜症(眼底鏡、Zeiss f450一式)、腎臓(血清クレアチニン値、尿検査:一般検査、尿中アルブミン、尿中クレアチニン、など) (3)遺伝子多型解析:ヒトDNA検体を対象とするSNPs解析:WAVE DNA fragment解析、WAVE MAKERソフト解析、TaqMan PCR法を用いる。ACE遺伝子多型、alopiloproproteinE (ApoE)遺伝子多型、その他enzyme11-betahydroxysteroid dehydrogenase type 1,UTS2,FABP2,ADIPOQ,EDNRA,PDX1の各遺伝子多型を対象とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バングラデシュ国農村部の女性におけるメタボリック症候群(MS)に関する包括的な研究としては世界初の報告となった。即ち、NCEP ATPIII基準では25.60%、修正NCEP ATPIII基準では36.68%、IDF基準では19.80%である事が、当研究で判明した。NCEP ATPIII基準では、ウエスト径増加は11.60%、血圧上昇は29.12%、空腹時血糖値の増加は30.42%、低HDL血症は85.47%、中性脂肪高値は26.91%であった。低HDL血症は、最も高率な所見であり、一方、ウエスト径増加は最も低率な所見であった。血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)は、臓器内における血管新生の主要分子であり、2つの特異的VEGF受容体(受容体1:VEGF-R1;受容体2:VEGF-R2)と結合して、その血管新生作用を発揮する。MS患者においては、このVEGF分子の発現に異常がある事を、我我は発見した。当研究では、流血中のVEGF,可溶性(s)VEGF-R1,可溶性(s)VEGF-R2の発現レベルを、MS患者と健常者(non-MS)とで比較した。さらに臨床所見や各種のMS関連因子についても比較した。VEGFレベルは、健常者に比べてMS患者では上昇が見られた(MS vs.non-MS:483.9(276.2-730.3)vs.386.9(228.3-634.7),p<0.001).一方、受容体の発現はMS患者において低下していた(sVEGF-R1,MS vs.non-MS:512.5(277.8-950.0) vs.631-3(337.8-1188.9),p<0.001;sVEGF-R2,MS vs.non-MS:9302-8±113.7vs.9787.4±116.7,p=0.004).多変量解析では、VEGFは、以下の変数との相関を示した:空腹時血糖(b=0.36,p<0.001),BMI(b=0.03,p<0.001),コレステロール(b=0.01,p<0.001),非HDLコレステロール(b=0.01,p<0.001),LDLコレステロール(b=0.01,p=0.003),インシュリン(b=0.06,p=0.008),HOMA-IR(b=0.01,p=0.04),拡張期血圧(b=0.01,p<0,001),収縮期血圧(b=0.01,p<0.001)。ウエスト周囲径については、年齢補正後の測定値で、b=0.01,p=0.04、であった。
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