Research Abstract |
カンボジアシェムリアップ州の子ども達の齲蝕罹患状況や食習慣の現状を把握し,その予防対策の検討を経年的に実施することにより,環境に伴う齲蝕・歯肉炎発症因子の解明,齲蝕・歯肉炎予防に貢献することを目的として第2回調査を実施した.昨年はシェムリアップ州の郊外サムロン・スバーン村の3歳,5歳および12歳の603名に対して口腔内診査および生活環境に関するアンケート調査を実施し,本邦に比べ非常に高い傾向が認められ,処置歯率は極めて低い傾向が示された。また,歯垢の沈着が著しい小児が多数認められ,歯磨き習慣が皆無に等しいことが示唆された。今回はシェムリアップ市内の3幼稚園と2小学校の3歳,5歳および12歳の671名に対して口腔内診査および生活環境に関するアンケート調査を実施した。得られた診査票とアンケート票から記載漏れ等の不備があった者を除外し,合計656名(男児336名,女児320名)を調査対象とした。その結果,1.齲蝕のない者:3歳児8名(4.8%),5歳児2名(0.7%),12歳4名(1.8%)であった。2.齲蝕有病者率:3歳児95.2%,5歳児99.3%,12歳98.2%であった。3.3歳児のdft:9.4,5歳児のdft:12.9,12歳児のDMFT:6.5であった。4.齲蝕未処置者率:3歳児98.7%,5歳児80.0%,12歳児91.7%であった。5.処置歯率:3歳児0.3%,5歳児3.2%,12歳児1.7%であった。 以上からシェムリアップ市内と郊外での齲蝕罹患状況はほぼ同様であり,本邦に比べ齲蝕罹患率が非常に高い傾向が示された。 齲蝕未処置者率は郊外の方が高く,市内には歯科医院が存在し通院が可能であるが郊外では歯科医院が存在しないことが、それらの要因と考えられた。また,市内在住者は郊外在住者に比べ保護者の月収が高い傾向が示され,そのため治療費の支払いが可能であったことなどが要因として考えられた。しかし,処置済歯の多くは二次齲蝕や破折している状況であり,処置後の予防教育や指導の啓蒙が必要と考えられた。 自然災害の影響により昨年12月に資料を採取したため現在も生活習慣についてアンケート結果を集計しており,その結果と齲蝕罹患状況を加味し,予防プログラムの確立に向け改善点を探る予定である。
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