Research Abstract |
最も簡単な微分方程式を1パラメータ拡張した非線形微分方程式の解として,q-指数関数が得られる.q-指数関数exp_q(-x)は,その変数xの値が大きいとき(q>1),べき乗則を有し,その指数法則から,q-積が得られる.このq-積を用いると,ツァリスエントロピーが一意に定まる.つまり,先の非線形微分方程式に対応するエントロピーは,ツァリスエントロピーである.ツァリスエントロピーとマルチフラクタルの関係は,式の上では明らかになっている.そこで,本研究では,マルチフラクタルの簡単なモデルを用いて,べき乗則が見られるカオスの縁の状態のそれらモデルとq-積との関係が明らかにした.(投稿・発表準備中) 一方,マルチフラクタルのような数学モデルから少し離れて,実際の現象として観測できるスケール不変性・長時間(距離)相関を調べるために,いくつかのネットワークモデルを用いて,シミュレーションなどを行った.具体的には,生物の進化モデルである自己組織化ネットワーク,ネットワーク上のノード間で取引を行うゲームによるネットワーク構造の変化,自然現象に数多く見られる振動子ネットワークの挙動などについて調べた.いずれのモデルにも共通して導入したアルゴリズムとして,ランダムに選んだノードから一定の距離の範囲で各モデルに応じた優先的選択を行うことで,ネットワークの次数分布に,べき乗則が現れることがわかった. 以上の結果を基にして,べき乗則がなぜ現れるのかという問題に対して,情報理論的な考察,特に,情報源符号化の観点から,その効率性について論じていく.
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