Research Abstract |
最大クリークを効率的に抽出するアルゴリズムの開発を進め,効率性の理論的保証を与えた.具体的には,極大クリーク全てを列挙するために既に開発し,最大時間計算量的に最適であることを証明したアルゴリズムCLIQUES(E.Tomita,A.Tanaka.H.Takahashi:Theoretical Computer Science,363,pp28-42,2006)を基本とし,それを最大であるクリーク1個だけを抽出すればよい様に限定し,更に分枝限定を有効に使うことにより,先ず次の理論的保証を与えるアルゴリズムを与えた."節点数がnのグラフにおいて,最大次数が2.613d(dは1以上の定数)以下の時,最大クリーク問題はO(n^{1+d})なる多項式時間的に可解である." 更に,詳細な場合分け解析とデータ構造の工夫により,次の改良結果を得た."節点数がnのグラフにおいて,最大次数が2.773d(dは0以上の定数)以下の時,最大クリーク問題はO(n^{1+d})なる多項式時間的に可解である." 以上の結果は,NP完全問題の典型である最大クリーク問題が,極く自然で単純な条件を設けることにより,理論的に効率良く,即ち,多項式時間的に解くことが前能となることを明らかにしたものであり,これまで実験的には認められていた事実に対して理論的保証を与えたことになる. 節点に重みを持つグラフの重み最大クリーク抽出問題に対しては更に実働的効率化を図り,バイオインフォマティクス上の問題を重み最大クリーク抽出問題に変換することにより,効果的に問題解決を達成した.更に,極大クリーク全列挙アルゴリズムをデータマイニングの問題に適用することにより,効率良く,かつ見通しよく同問題に有効適用できることを明らかにした. この他,計算論的学習理論や画像処理などの問題に関して幾つかの新たな成果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最大クリーク抽出問題を効率良く,即ち,多項式時間的に解くことの出来るアルゴリズムおよび計算量解析は順調に進展した.ただし,当初そのアルゴリズムと解析はそれ程複雑にならなくて済ませることを期待していたが,同問題に関する関連研究と同様にかなり複雑とならざるを得なかった.応用のためのアルゴリズムの実働効率化および実験は,予期以上に良好な結果を得た.
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Strategy for Future Research Activity |
最大クリーク抽出問題を多項式時間的に解くことの出来る十分条件の一層の緩和については,これまでの実績の上で具体的な手がかりを得ており,それを更に一層追求する.ここで,その進展に伴ってアルゴリズムと解析の一層の複雑化はある程度避けられないと推測されるが,それを極力単純化することにも大きい努力を払う,これと同時に,一般グラフにおける(指数的)時間計算量の改善も達成する.更に,これらのアルゴリズムの実働効率化も進め,出来るだけ広い対象への応用を図る.
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