2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子ロボティクスのための反応系解析アルゴリズムの理論
Project/Area Number |
22500010
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
小林 聡 電気通信大学, 情報理工学研究科, 教授 (50251707)
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Keywords | 分子ロボット / 平衡状態計 / 核酸配列インタラクション |
Research Abstract |
分子ロボットの化学反応回路で用いられる反応系は,(P1)生成される分子種の個数が組み合わせ爆発を起こす,(P2)少数分子反応系として扱う必要が生じる場合がある,(P3)少数分子反応系と多数分子反応系が階層的に混在する場合がある,といった特徴がある.これらの特徴をもつ反応系を解析するためのアルゴリズム論を確立することにより,分子ロボットの化学反応回路の解析と設計に役立てることを研究目的としている.平成23年度は,(P1)の課題に関して,核酸の複数配列のインタラクション反応の平衡状態を求める問題を,二次構造のクラスを線形な構造に限定することによって,多項式の次数の凸計画問題に帰着することに成功した.また,仮想塩基配列のインタラクション反応に対しても同様の理論を展開した.ここで,仮想塩基とは,ある長さの塩基配列を1つの単位とみなした記号であり,その導入により反応系の解析問題の次元を大きく削減することができる.ただし,仮想塩基を導入しても次元の指数爆発の問題は避けられない.本研究では,対称な二次構造が生成されないための仮想塩基配列集合の十分条件を示し,そのような条件下では,帰着した凸計画問題の次数のオーダーをさらに大きく削減できることを示した.(P2)の課題に対しては,核酸配列1分子が構造変化する少数分子反応系に対して,その定常状態を計算するための効率の良いアルゴリズムを提案した.今後は,より複雑な配列インタラクション反応に対しても同様の議論が展開できるかを考察したい(P3)の課題に対しては,最終年度に成果を出すべく検討を重ねている段階である/また,補足的な成果として,化学反応に基づく計算に関して,Reaction Automataという計算モデルを提案し,その計算能力に関する考察も行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフを用いて構造を数え上げるという発想により,核酸配列のインタラクション反応を解析するアルゴリズムに新しいアプローチがあることを示せた.また,少数分子反応系の解析においても,反応系の状態を数え上げるという発想を適用することにより,新しいアルゴリズムの可能性を示すことができた.この分野の重要な進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である24年度は,課題(P2)に対して得られた23年度の成果をさらに進展させ,核酸配列のインタラクション反応に対して,少数分子反応系の定常状態計算アルゴリズムを開発することを推進する予定である.さらに,このアルゴリズムの持つ計算量理論的な意味を深く追求したいと考えている.また,課題(P3)に対する新しいアプローチがあり得ることを示すことも大きな目標である少数分子反応系の解析と,多数分子反応系の解析をグラフを用いて列挙するという統一的な視点からこの課題を分析し,新しい視点を与えることができないかを模索する予定である.
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Research Products
(6 results)