Research Abstract |
再構成可能なディジタル波形信号合成器とその設計自動化ツールの開発を最終目的とし,平成23年度は,平成22年度に開発したプロトタイプ波形信号合成器の設計自動化ツールを開発するために,以下の研究を行った. 1.ノイズ信号の数学的な解析:数学関数回路の設計では,多くの場合,最大絶対誤差を用いて誤差解析が行われるが,波形信号合成器では,最大絶対誤差だけでなく平均二乗誤差やSFDR(Spurious Free Dynamic Range)などの様々な誤差尺度が用いられるため,用いた尺度に応じたノイズ信号の解析が必要になる.そこで,本研究では,まず評価尺度ごとの性質を調べ,尺度ごとに,合成器内で生じる誤差とノイズ信号の大きさとの関係を表す式を導出した.導出した式からノイズ信号の最大値(最悪値)も,最大絶対誤差同様,合成器内で生じる誤差の積算により算出でき,逆に,与えられた最悪値以下にするためには,合成器内の各誤差をいくつに抑えればいいかがわかるようになった.また,本研究で得られた解析のアイデアを他の研究プロジェクトに応用することができ,その結果,新たに考案した解析法で特許の出願に至った. 2.数理計画法などを用いた設計最適化ツールの開発:1.の成果として得られた式を用いて,設計仕様として与えられた許容範囲内で,最も高性能な波形信号合成器の構成を見つける設計最適化ツールを開発した.波形信号合成器の設計では,用いた誤差尺度により,最適解な構成が異なるため,本研究では,尺度ごとに求めた1.の式を使い最適化するアルゴリズムを考案した.メモリ量の最小化に関する計算機実験の結果,提案したアルゴリズムは,従来の最大絶対誤差のみを対象にした手法に比べ,最大で約38%のメモリ量が削減可能であることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度までのところ研究が順調に進展しており,得られた研究成果と本取り組みが学会から表彰されるなど,単に研究が進展しているだけではなく,その成果も高く評価されている.また,一つの研究成果から,連鎖的に他の研究成果も得られており,研究自体は,当初の計画以上に進展していると言えるかもしれない. ただ,研究成果の論文等による報告が,教育やその他の活動により,若干滞っているため,おおむね当初の計画通りの進展状況となっている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ研究遂行に支障が出るほどの大きな問題が発生しておらず,ほぼ当初の計画通り研究が順調に進んでいるため,今後も計画をほとんど見直すことなく研究を進展していくことができると確信している. ただ,「現在までの達成度の欄で述べたように,研究成果の報告や資料整理等が,研究代表者の昇任に伴い他の活動に忙殺され,滞り気味なので,この点については,当初は研究代表者のみで研究を遂行する計画であったが,研究協力者や謝金を有効活用し,研究計画に大きな支障が出ないようにする予定である.
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